【陸上】東京世界陸上の競歩は国立競技場発着…藤井菜々子「いろいろな人に見てもらうチャンス」

AI要約

東京で開催される世界陸上競歩大会のコースが発表され、競技場発着のレースに藤井菜々子選手が期待を寄せていたことが明らかになった。

藤井選手は競歩の魅力を語り、家族やチームメートの応援を受けながら競技を楽しむことに喜びを感じている。

藤井選手は、今回の世界陸上でも入賞を目指し、競歩の価値を高めるために練習を積んでいる。

 開幕まで1年を切った陸上の世界選手権東京大会(25年9月13~21日)の競歩のコースが14日、都内のイベントで発表された。男女20キロ、35キロともに発着は国立競技場。メインスタジアムが発着となるのは、15年北京大会以来となる。

 オリンピック(五輪)2大会連続出場の藤井菜々子(25=エディオン)は、以前からスタジアム発着のコースでの開催を望んでいた。願いが実現し、喜びの声を弾ませた。

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 スクリーンにうつし出されたコースを見ながら、藤井はひときわ明るい表情を浮かべた。

 「人生で初めての競技場発着コースとなるので、沿道での応援がどうなるのか、とっても楽しみです」

 国立競技場をスタートし、神宮外苑に沿った周回コースを経て、再び競技場へと戻るルート。競歩のロードでは競技場発着のレースがほとんどなかっただけに「競技場発着と発表されて、楽しみでわくわくした気持ちでいっぱいです」と自然と声が弾んだ。

 藤井はもともと長距離ランナーを志していた。全国高校駅伝を目指し、地元福岡の強豪・北九州市立高へ進学。ただ、1年冬に左足のすねを疲労骨折したことを機に、競歩の道へ進むことになった。

 当初は憧れの長距離種目から離れていくことに複雑な思いも抱いたというが、競歩ならではの魅力にも気付いていった。

 「マラソンの応援は沿道で1回だけかもしれないですけど、競歩は同じコースを何回も歩くので、その分だけ応援できる」

 レースに出れば、沿道で見守る家族やチームメートの表情が分かる。写真撮影のチャンスも多く「どれを選べばいいのか迷ってしまう」とうれしそうに話す関係者もいる。「応援に行ってみたら楽しかった」という声も耳にしてきた。藤井自身も「距離が近くていいな」と実感するようになった。

 ただ同時に、世界大会でスタジアムの観衆に見守られながら歩く光景も見てみたいと思っていた。そうすれば、あまり関心がなかった人が競歩に触れる可能性が高まるからだ。「東京の世界陸上では、国立競技場でゴールできたらいいですよね」。今夏のパリ前にも、希望を口にしていた。

 そして来年の秋、東京で願いが実現する。「今まで憧れでした。現役の中では、競技場発着を経験している選手がほとんどいないと思うので、みんなとも『楽しみだね』と話しています。いろいろな人に競歩を見てもらえるチャンスなので、しっかり生かせるようにしたいです」と笑顔でうなずいた。

 その舞台で躍動するためにも、まずは出場権の獲得を目指す。昨夏の世界選手権は14位、パリでは32位となり、目標の入賞には届かず。来秋へは22年世界選手権の6位を上回る順位を目指し、再スタートを切っている。

 「自分の中で一番上の順位、メダルを目指して頑張りたい。(パリ五輪の)次の日から世界陸上へ向けて再始動していて、練習を再開している。前を向いて練習しています」

 競歩の価値を高めるためにも、歩き続けていく。【藤塚大輔】