今永昇太「ビビってるのか。こんな楽しい舞台ないぞ」ド軍打線に手足震えるも自ら俯瞰し恐怖克服

AI要約

カブス今永昇太投手が、ドジャース大谷翔平投手を封じて13勝目を挙げる。今永は大谷を3打席無安打に抑え、山本由伸との投げ合いに勝利。恐怖心を克服し、発揮した力でチームを勝利へ導いた。

今永昇太「ビビってるのか。こんな楽しい舞台ないぞ」ド軍打線に手足震えるも自ら俯瞰し恐怖克服

<ドジャース3-6カブス>◇10日(日本時間11日)◇ドジャースタジアム

 【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)10日(日本時間11日)=久保賢吾】カブス今永昇太投手(31)が、ドジャース大谷翔平投手(30)を封じ、7回3失点の好投で13勝目を挙げた。山本由伸投手(26)とのメジャー初の投げ合いとなった一戦で、大谷を3打席無安打に抑え、今永に軍配が上がった。マウンドに上がる前は恐怖心で足と手が震えたというが、超一流の大谷、山本との対戦でリミッターが解除され、チームを勝利へ導いた。メジャー1年目の13勝は野茂英雄、田中将大に並び、日本選手5位タイになった。

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 1回、打席に入る時にヘルメットのつばを手でつまみ、軽くお辞儀した大谷に、今永は帽子のつばに手を添えて応えた。18・44メートルの真剣勝負が幕を開けた直後、92・7マイル(約149キロ)の外角高めの速球で遊飛に抑えた。2打席目の3回無死一、二塁では、カウント2-1から一ゴロ併殺。スライダーを選択した理由に「投げる哲学者」の独特な思考が詰まった。

 「真っすぐかなとも思ったんですけど、僕が想像できることは打者も想像できることなので、勇気を持って、得意球ではなく、苦手ですけど、一番確率が低そうな球を選択した」

 5回の第3打席は、1ストライクから再びスライダーを投じ、フェンス際への右飛。タイミングをわずかにずらし、バットの先だった。「たった1打席で球場の雰囲気を変えられる力がある」と警戒した大谷を3打数無安打と沈黙させ、再三の好守、鈴木の適時打など打線の援護も受け、7回3失点の好投でリーグ3位の13勝目を飾った。

 強打のドジャース打線との対戦に、重圧と恐怖心から足と手が震えた。ブルペンでは「変化球も入らず、真っすぐも全く指にかからず、これ大丈夫かなって」と我を失いかけたが、救ったのはもう1人の自分だった。自らを俯瞰(ふかん)し「こんなことでビビってるのか。こんな楽しい舞台はないぞ」と言い聞かせ、不安に打ち勝った。

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 「初回のピッチングを見て、あらためてとんでもない投手だと思った」と評した山本、屈指の強打者の大谷との対戦が、未知の自分も呼び覚ました。

 「ダルビッシュさんに言われたんですけど、素晴らしい選手と野球をやるとリミットが外れて、自分の知らない力が出る瞬間があると。まさに今日、山本投手、大谷選手、ドジャース打線を抑えるために、チームが勝つために、自分の知らない力が出たんじゃないかなと思います」

 世界が注目した一戦で、「IMANAGA」の名を広めた。

 ▼カブス今永が13勝目。日本人の1年目では16年前田(ドジャース=16勝)以来7人目。13勝は95年野茂(ドジャース)14年田中(ヤンキース)に並ぶ5位タイとなった。左腕では02年石井(ドジャース)の14勝に次ぐ2位。今永は今季2度目の4連勝。先発した27試合でのチームの勝敗は21勝6敗で、他の先発した8投手は合計で54勝64敗。

 ▼今永と山本(ドジャース)が先発投手で投げ合い。日本人の先発投手対決は23年6月4日の菊池(ブルージェイズ)と千賀(メッツ)以来18度目。ドジャースタジアムでは10年7月22日の黒田(ドジャース)と高橋尚(メッツ)以来14年ぶり2度目で、ド軍から白星を挙げたのは今永が初めて。