【月刊ラモス】長谷部誠さん電撃入閣に「将来の日本代表監督就任を見すえても、とてつもなく大きな意味」

AI要約

日本サッカー協会は29日、2026年W杯アジア最終予選C組の中国戦(9月5日・埼玉スタジアム)、バーレーン戦(同10日・リファー=バーレーン)を前に、日本代表のメンバーを発表。あわせて昨季限りで現役を引退した元日本代表主将の長谷部誠さん(40)=ドイツ1部フランクフルトU―21コーチ=が代表コーチに加わることを明らかにした。...

 W杯4強入り、そして優勝を実現するために、世界のトップを知る長谷部コーチの実績と経験は日本代表にとって大きな力になるだろう。...

 また、日本代表のコーチとして経験を積み、成長することはフランクフルトにとっても大きな財産となるだろう。...

【月刊ラモス】長谷部誠さん電撃入閣に「将来の日本代表監督就任を見すえても、とてつもなく大きな意味」

 日本サッカー協会は29日、2026年W杯アジア最終予選C組の中国戦(9月5日・埼玉スタジアム)、バーレーン戦(同10日・リファー=バーレーン)を前に、日本代表のメンバーを発表。あわせて昨季限りで現役を引退した元日本代表主将の長谷部誠さん(40)=ドイツ1部フランクフルトU―21コーチ=が代表コーチに加わることを明らかにした。この”電撃入閣”に「月刊ラモス」のラモス瑠偉編集長は、「最高のサプライズであり、最高の戦力補強」と日本代表・森保一監督の決断を高く評価した。

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 今年4月の「月刊ラモス」で、長谷部コーチについて「海外のクラブで指導者としての実績を残し、いつの日か日本代表を率いてほしい」と書いたが、まさかこのタイミングで日本代表のコーチに入閣するとは…。最高のサプライズであり、最強の戦力補強である。森保監督も、随分思い切った決断をしたものだ。

 W杯4強入り、そして優勝を実現するために、世界のトップを知る長谷部コーチの実績と経験は日本代表にとって大きな力になるだろう。W杯に3大会連続でキャプテンとして出場。07年にドイツ・ブンデスリーガのウォルフスブルクに移籍して、08―09年シーズンにリーグ制覇。フランクフルトでは21―22年シーズンの欧州リーグを制覇している。ブンデスリーガ出場384試合は外国人として歴代2位タイ。世界のトップリーグで長く活躍し、大きな実績を残してきた。

 最近では冨安(今回はケガで選外)、三笘らがイングランド・プレミアリーグ、久保がスペインリーグで実績を残しているほか、ドイツ、フランス、イタリアの欧州5大リーグで多くの日本人選手が活躍している。現在の代表スタッフの現役時代と比べ、選手たちの実績ははるかに上をいっている。その意味でも、現在の選手以上の実績を持つ長谷部コーチの言葉は大きな説得力を持つだろう。

 さらに、長谷部コーチの人間性も大きい。現役時代から自分に厳しく、背中でほかの選手を引っ張るタイプ。手を抜かないし、仲間意識も強く、思いやりがある。だからこそ、周りの選手も彼を信じてついていった。キャプテンの中のキャプテンだった。それゆえに、多くの選手が彼をリスペクトし、ついていった。今年5月に引退したばかりで、選手に近い目線で物事を考え、見ることもできるだろう。森保監督の考え、コンセプトを選手に浸透させる上で、長谷部コーチはパイプ役としても大きな力を発揮するに違いない。

 森保ジャパンの現状をみると、8強止まりに終わったアジア・カップの戦いぶりには、一抹の不安を感じた。最後に決断するのは森保監督だが、苦しい戦いの中でコーチ陣がもっとアイデアを出し、森保監督をサポ―トできないものかと歯がゆさを感じていた。うまくいかないときにこそ、その力量を問われるのがアシスタントコーチだ。それを補うものとして、長谷部コーチの経験値と熱量に期待したい。

 同時に、長谷部コーチには、最新の欧州情報を日本に持ち込んでくれるパイプ役になってもらいたい。引退後、U―21コーチとして、フランクフルトと契約を結んだ。指導だけでなく、情報収集や分析、戦略構築など欧州での最新のサッカー理論を学ぶには、最高のポジションにいる。

 長谷部コーチにとってはW杯予選、W杯という最もシビアな舞台での経験を積むことができる。また、日本代表のコーチとして経験を積み、成長することはフランクフルトにとっても大きな財産となるだろう。日本代表にとってもフランクフルトにとっても、そして、長谷部コーチにとってもウィン・ウィン&ウィンの日本代表コーチ就任。IW(国際Aマッチウィーク)限定の契約ということだが、将来の日本代表監督就任を見すえても、今回の人事はとてつもなく大きな意味を持つ。

 その一方で、非常に残念だったのが藤田譲瑠チマがメンバーに入らなかったことだ。彼はパリ五輪アジア予選、パリ五輪で素晴らしいパフォーマンスを発揮した。対人プレーの強さだけでなく、視野の広さを生かしたパス、ボールのキープ力、さらにドリブルとレベルの高いプレーを見せてくれた。

 私は藤田にA代表の軸として活躍している遠藤以上の将来性を感じており、ポスト遠藤の一番手だと思っている。それだけに、アジア最終予選でのメンバー入りを期待していたのだが、今回は入らなかった。しかし、これから必ずチャンスが来るので、とにかく所属するシントトロイデン(ベルギー)で実績を積み上げてほしい。

 パリ五輪組でもう一人A代表入りを期待していた高井幸大(川崎)は初の代表選出となった。192センチと長身で、パリ五輪ではその高さと対人プレーの強さを生かしスピードにも対応していた。キックも正確。DFラインから好パスを供給し、攻撃においても大きな役割を果たしていた。まだ19歳と若いが、堂々としたプレーぶりで、アジア予選を含め、パリ五輪で最も成長した選手である。

 今後、A代表の練習で三笘、久保らスピードや突破力のある選手と一緒にプレーすることでさらに磨きをかけてほしい。高井には高さという絶対的な武器がある。A代表のスピードに慣れることで、世界レベルのスピードに対応できれば、さらにスケールの大きな選手へと成長するだろう。大いに期待したい。

    (元日本代表)