【サッカー界から消えた「フェアプレー」は何色か】(3)宣言後も変化がない「Jリーグの試合」とスペインで目撃した「旗の色」

AI要約

サッカーのフェアプレーに関する色の意味や歴史について述べられている。

FIFAのフェアプレーキャンペーンの変遷や現在の取り組みについて説明されている。

日本サッカー協会のリスペクトプログラムについて触れられている。

【サッカー界から消えた「フェアプレー」は何色か】(3)宣言後も変化がない「Jリーグの試合」とスペインで目撃した「旗の色」

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回のテーマは、黄色か、青か―。

 2001年4月にフィリップ・トルシエ監督率いる日本代表がスペインに遠征し、スペイン代表と対戦した。そのとき試合前に登場した「フェアプレー旗」を見て、私は目を見張った。黄色ではなく、青だったからだ。

 真っ青な旗にボールをける人の姿が黄色で染め抜かれ、そこに「JUEGO LIMPIO(スペイン語で「フェアプレー」)」の文字。私はうなった。「そうか、スペインではフェアプレーのイメージは青なのか」と、目からウロコが落ちる思いをしたのである。

 アジアサッカー連盟(AFC)は長く試合時にFIFAのフェアプレー旗を使用していたが、2007年のアジアカップ(東南アジア4か国開催)を前に独自のフェアプレー旗をつくった。それも「青」だった。

 青は空や海、水の色である。そこから「冷たさ」や「悲しみ」を感じさせる色と言われている。しかし、その一方で、清潔感や公正さといったポジティブなイメージもあり、考えてみれば、「フェアプレー」にピッタリと重なる。

「青春」という言葉があるためか、日本人は青が大好きだ。ある調査では、青を「いちばん好きな色」とする日本人の割合は、なんと40%近くにものぼるという。2位の緑は16.4%に過ぎない。日本代表チームのユニフォームが青であり、「アマチュア時代」の日本サッカーリーグでは、ある時期まで「青」のチームばかりだったことは、けっして偶然ではないのである。

 FIFAは2015年のスキャンダルを受けて2016年に大きく組織が変わり、その後、数年のうちに「ブラッター時代」のものは徹底的に払拭された。1994年にアメリカのワールドカップ組織委員会からFIFAに寄贈された「FIFAアンセム」まで抹殺してしまったのは馬鹿げたことだったと思うが、ブラッター色の濃い「フェアプレー・キャンペーン」が葬り去られたのは、仕方がなかったかもしれない。

 現在、FIFAは「FOOTBALL UNITES the World(サッカーは世界をひとつにする)」というキャンペーンを行っている。マークはハート型で、キャンペーン自体のテーマカラーはない。ただ、試合前に使われる旗の地の色は「水色」である。

「フェアプレー」は死語ではないが、以前ほど祭り上げられなくなっているのかもしれない。最近は、「フェアプレー」の原点でもある「リスペクト」をサッカーの価値を高める重要な要素であることが意識され、キャンペーンのテーマを「リスペクト」とする組織も増えている。

 日本サッカー協会も「リスペクト・プログラム」を推進し、国際試合のときには「RESPCT~大切に思うこと」という文字を入れた紺色の「リスペクト旗」を先頭に選手入場のセレモニーを行っている。