【千葉魂】千葉ロッテ菊地、見えた新境地 気持ちの変化、投球にも(第434回)

AI要約

1年目の活躍が期待されながら、1軍での登板は1試合に留まる苦しいスタートを切った菊地吏玖投手。

悔しさを乗り越え、沢田圭佑投手からの助言や自己革新を通じて成長し、今やマリーンズの中継ぎ陣の一員として活躍している。

若手ながらキャリアを前進させ、活躍の場を広げるために日々努力を惜しまない菊地吏玖投手。

【千葉魂】千葉ロッテ菊地、見えた新境地 気持ちの変化、投球にも(第434回)

 周囲の期待に応えられない自分を責めたこともあった、菊地吏玖投手は昨年、ドラフト1位で専修大学からマリーンズ入り。しかし、注目を浴びた1年目は1軍で1試合の登板のみで終わった。1試合に先発をして0勝1敗。それが残った成績だった。即戦力左腕としてのファンの期待に応えられなかった。悔しさしか覚えていない1年だった。

 「1位で入って、しかも大卒だから当然、即戦力として期待をしてもらっている。周囲の期待に応えることができていないことに対して、そして活躍できず、求められていた仕事ができなかったことに関して、申し訳ない気持ちが大きかった」と菊地は振り返る。

 悔しさを胸に気合を入れて迎えた2年目。年始め早々からZOZOマリンスタジアムのグラウンドには体を動かす菊地の姿があった。だが今年にかける想いとは裏腹に、シーズンが始まると1軍に昇格はするが、定着できずの日々となった。

 夏の太陽が照りつける2軍グラウンドで悩める若き左腕は沢田圭佑投手から何度となく諭された。「いろいろと考えずに投げ切るだけ。自分ができること、自分のピッチングを全力でやり切るだけ」。優しい声で毎日のようにそう言ってくれた。いつしか、なにかが吹っ切れた自分がいた。

 「いつもいつもそういう話をしてくれた。そうすると不思議と吹っ切れてきた」と菊地。そしてコーチやさまざまなチームスタッフと話をしながら自分なりに導き出した考え方があった。

 「今まではあれこれと考え過ぎていた。1軍に上がったら、ここからずっと1軍にいたいとばかり考えていて、どこか守りに入っていた。落ちる時は落ちる。上がる時は上がる。そう考えるようにした。ピッチングに関してもこれまではキャッチャーが構えたところにしっかり投げないといけないとばかり考えていた。逆に今はコントロールをあまり気にしなくなった。ゾーンにアバウトでもいいのでガーンと投げて打者を詰まらせようと。それが持ち味かなと」(菊地)

 気持ちが変わり、ピッチングが変わった。8月3日のバファローズ戦(京セラドーム大阪)で1軍に再昇格をすると、さっそくこの日、七回から3番手として登板をして2回を打者7人、被安打1、3奪三振の投球で無失点。躍動感あふれるフォームから繰り出されるキレのあるボールで打者をねじ伏せていった。これをキッカケにその後も好投を続け、今やマリーンズ中継ぎ陣の大事なピースに定着しつつある。

 「鈴木(昭汰)さんとか横山(陸人)も去年、これくらいの時期に1軍で結果を出して、今年、開幕から1軍で活躍している。自分も残り試合は少ないですけど、このチャンスで自分らしいピッチングを首脳陣に見てもらって今後につなげたいと思っている」と明確な目標を口にする。

 まだ24歳。キラキラと輝く未来はここから始まると言っていい。自分ができること、自分のピッチングを全力でやり切るだけ。少し立ち止まって自分と向き合い、先輩たちの言葉に耳を傾け、考え方を変えてみるとマウンドから見える景色が変わっていた。今まで微かにしか見えなかった成功への道がハッキリと見えてきた気がする。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)