パリ五輪金・角田夏実の素顔、慕う後輩たちが証言「どんな人にも平等」「減量中も不機嫌な姿を見たことない」

AI要約

パリ五輪で日本が海外開催歴代最多の金メダル20個を獲得したことや、柔道女子48キロ級の角田夏実が金メダルを獲得した経緯などについて紹介。

角田夏実の巴投から腕挫十字固へのスタイルや大学時代から柔術を習い始めていたこと、個人戦での活躍、練習仲間からの評価など。

角田の人柄や後輩部員からの評価、YouTubeチャンネルでの姿勢、礼法の伝承などが紹介されている。

パリ五輪金・角田夏実の素顔、慕う後輩たちが証言「どんな人にも平等」「減量中も不機嫌な姿を見たことない」

 今月11日に閉幕したパリ五輪。日本は海外開催歴代最多の金メダル20個、総数45個のメダルラッシュだった。そんな今大会で金メダル第1号となったのは柔道女子48キロ級の角田夏実(31=SBC湘南美容クリニック)だ。“巴投”と寝技を駆使し、団体戦でも2階級上のメダリストを投げ飛ばすなど大活躍だった。そんな角田の人柄について母校の東京学芸大柔道部に話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 巴投から腕挫十字固(うでひしぎじゅうじがため)への移行は大学時代から柔術を習い始めた角田ならではのスタイルと言っても過言ではない。個人戦ではこの勝利の方程式で1回戦、2回戦を危なげなく一本勝ち。準々決勝では巴投で開催国・フランスのシリヌ・ブクリを開始わずか1分で投げ飛ばした。準決勝のタラ・バブルファス(スウェーデン)戦はゴールデンスコア(延長戦)に持ち込まれる激闘を制し勝利。決勝も巴投でバーサンフー・バブードルジ(モンゴル)を破り、頂点に立った。

 角田と練習経験のある部員たちは「同じ階級(48キロ)とは思えない」と口をそろえる。伝家の宝刀と注目された“巴投”以前に身長162センチの長い手足を生かした“組み手”で制されてしまい「遊ばれている感覚」になるという。

 相手は日本代表とはいえ、後輩部員たちも長く柔道をやってきた大学生。それでも乱取りでは全く歯が立たないこともある。「夏実さんの間合いをキープされてしまう。柔道衣を握る力が強く、技の極めまでしっかりとやっているので逃げられません」「まず釣手、引手を持たせてもらえないです」「長い手足で相手と距離を取ったり、自分が技に入りやすい間合いを作るのが上手。引手の絞りで相手を制している」と“証言”した。

 そして今回注目された“巴投”。実際に技を受けたことのある部員からは「入られたら絶対に逃げられないです」「百発百中」「気づいたら宙を舞っていました」とこれまでに経験したことのない技を受けている感覚になると振り返っていた。

 YouTubeチャンネル「角田夏実の部屋」では、過酷な減量期でもカメラに笑顔を見せていた。その人柄について後輩部員も「減量中でも試合前でも、不機嫌な姿を見たことがありません」と明かす。

 他にも「まだ親しくもなく、全く強くもない私に、真摯(しんし)に技術アドバイスをしてくださいました」「実力も実績もある選手なのに決しておごらず、学生に声をかけてくれたり、乱取りをお願いしに来てくださいます」「乱取り中も自分のことだけでなく周りを見て後輩にアドバイスをしてくれます」「どんな人にも平等に接することが出来る方です」など後輩からも慕われていることをうかがわせた。

「私も夏実さんのように後輩に還元していける選手になりたい」とひとりの部員は言う。金メダル第1号は、日本のメダルラッシュに勢いをつけた。五輪は勝負の世界。競技力やメダルの数に目がいきがちだが、角田は柔道の大切な精神「礼法」も後輩たちに伝えている。