中上貴晶32歳、来季はテストライダーに…「次の日本人が活躍するときが来た」と語る小椋藍への思い《シートを受け継ぐのはタイの英雄チャントラ》

AI要約

中上貴晶は日本のエースとしてMotoGPクラスで7シーズン戦い、来季はMotoGPクラスのテストライダーとして活動することが決まりそうだ。

小椋藍がアプリリアのサテライトチームからMotoGPクラスへの参戦が決定したため、中上はレギュラーシートを譲る覚悟をした。

ホンダは来季も2チーム4人体制で参戦するが、IDEMITSU Honda LCRのシートには来季からソムキアット・チャントラが就く見通しである。

中上貴晶32歳、来季はテストライダーに…「次の日本人が活躍するときが来た」と語る小椋藍への思い《シートを受け継ぐのはタイの英雄チャントラ》

 中上貴晶は日本のエースとしてMotoGPクラスで7シーズン戦ってきた。だが、レギュラーライダーとして戦うのは今季が最後となりそうだ。来季、中上に代わってIDEMITSU Honda LCRのシートに座るのは、現在ホンダチームアジアからMoto2クラスに出場しているソムキアット・チャントラ。早ければ来週スペインで開催される第12戦アラゴンGPで正式発表される見込みだ。

 中上は来季について6月頃からホンダと話し合いを続けてきたが、8月に入って第10戦イギリスGPで後半戦がスタートして以降のタイミングで、MotoGPクラスのテストライダーとしてオファーを受けたようだ。

 先週末の第11戦オーストリアGPで、中上は「ホンダからオファーをもらい、いま考えているところ。この数戦のうちに答えを出したい」と語った。オファーに対して即答しないのはMotoGPのレギュラーライダーではなくなるからだろう。そして興味深かったのは、来季アプリリアのサテライトチームからMotoGP参戦が決まった小椋藍に関するコメントだった。

「(小椋のMotoGP参戦についての質問に)どう答えていいのかわからないが、藍にとっては大きなステップ。ホンダ、HRCのサポートを受けてる中で他メーカーにいくのは、すごく勇気のいること。藍はスピードもあるしMoto2で活躍している。MotoGPに参戦するのはベストなタイミング。次の日本人が活躍するときが来たと思う」

 中上はこの数年、自分がレギュラーシートを譲るのは小椋のMotoGP昇格が決まったときと覚悟していた。そのシート、つまり日本人枠は2年前に小椋に引き継がれる予定だったが、当時は小椋が「Moto2でチャンピオンを獲りたい」とMotoGP参戦を辞退。それもあって、中上はMotoGP参戦を継続し、ホンダがサポートする日本人ライダーとしては異例と言える7年目のシーズンを迎えていた。

 MotoGPクラスにおける中上のこれまでの最高位は4位。コロナ禍に開催された2020年はPP獲得やフロントローもあり、何度も表彰台獲得のチャンスはあったがものにできなかった。その後ホンダの低迷が始まり、22年のドイツGPは40年ぶりのノーポイントとなって大きなニュースになった。低迷は続き、ついにはホンダでMotoGPクラス6回のタイトルを獲ったマルク・マルケスが、23年限りでドゥカティのサテライトチームへ移籍した。

 そんなホンダ陣営にあって、中上は粘り強く最後まで走ってホンダ勢最上位でゴールすることも度々あった。チームメートのヨハン・ザルコはもちろん、ホンダワークスに所属する2020年の世界王者ジョアン・ミル、今年ワークス入りしたルカ・マリーニにも「負けているとは思わない」と常々語ってきたが、大低迷期とはいえ7年で一度も表彰台獲得がないことに厳しい声があがっていた。

 加えてMotoGPクラスにおける中上は、35歳のアレイシ・エスパルガロ(アプリリア)と34歳のザルコに次ぐベテランで、今年は「もう32歳、こんなレースをやっているとモチベーションも続かないし、ライダーとして決断の時」と何度も口にしてきた。

 中上に他メーカーのオファーはなく、スーパーバイクなど他のカテゴリーでシートを探して現役生活を続けることは「考えていない」とキッパリ。一方で「引退も視野に入れている?」という質問には、「わからない」と揺れ動く心境を語ってきた。

 ホンダは低迷するメーカーに与えられる、テスト日数やマシン開発の制限を排除した「コンセッション」ルールを最大限に活用し、マシンの開発に全力を尽くしている。来季も2チーム4人体制での参戦となるが、すでにザルコ、ミル、マリーニは来季も継続参戦が決まっており、残るはIDEMITSU Honda LCRのシートだけ。ホンダは来季こそ乗せたいと小椋を慰留したが、彼の決断は揺るがなかった。

 次なる候補として以前から名前が挙がっていたのがチャントラだ。ホンダはこれまで、日本人をひとりはMotoGPに参戦させてきたが、それがついに途絶えることになる。