神奈川ダービーが示した「2つの強豪」復活の兆し(2)強い川崎の鍵を握る「帰ってきた10番」と成長を続ける「若い2人」、待っていた「落とし穴」

AI要約

J1リーグでは先週末、多くのダービーが開催された。中でも注目されたのが、川崎フロンターレと横浜F・マリノスによる神奈川ダービーだ。両チームが激突し、苦戦が続く中、復活の「兆し」が見えた。

PKを獲得し先制した横浜FMに対し、川崎は連続失点を喫し、守備の集中が途切れた。若手センターバックの経験不足からミスが出たが、将来性豊かな選手であることも確認された。

川崎は終盤に猛攻をかけ、途中出場の選手が強烈なボレーシュートで追いすがった。敗因はチャンスの決定力不足と守備の切れた集中であり、今シーズン前半戦とは異なる成長を示した。

神奈川ダービーが示した「2つの強豪」復活の兆し(2)強い川崎の鍵を握る「帰ってきた10番」と成長を続ける「若い2人」、待っていた「落とし穴」

 J1リーグでは先週末、多くのダービーが開催された。中でも注目されたのが、川崎フロンターレと横浜F・マリノスによる神奈川ダービーだ。2017年からの6シーズン、J1タイトルを分け合ってきた2チームが激突したのだ。今季は苦戦が続いているが、このダービーでは復活の「兆し」が見えた。サッカージャーナリスト後藤健生が、両チームの変化の「胎動」に迫った!

 これだけ決定機をつかみながらも1ゴールも決まらなかったのは、明らかに決定力不足だった。だが、相手GKが当たっていて運にも見放されると、どれだけ攻めても点が入らないのがサッカーという競技の特性である。

 そして、そんなときに落とし穴が待ち受けているというのもサッカーではよくあることだ。

 55分。横浜FMはエドゥアルドからパスを受けた左サイドバックの永田勝也が中央に入れ、アンデルソン・ロペスがワンタッチで西村拓真に落とすと、西村が倒されてPKを獲得。アンデルソン・ロペスが決めて横浜FMが先制した。

 それまでの試合内容を考えれば、川崎にとって1点差を追いつき、逆転することは十分に可能だったはず。ところが、PKのわずか2分後に西村にスーパーなミドルシュートを決められ、連続失点を喫してしまったのだ。

 右サイドバックの松原健からアンデルソン・ロペスへのくさびのパスが入り、落としたボールを西村が決めたものだ。

 PKの場面もそうだが、くさびのパスが入った瞬間にもう少し厳しくチェックしておくべきだったし、シュートの場面でも寄せきれなかった。そして、先制を許したことで守備の集中が途切れたようにも見えた。

 川崎のCBは24歳の佐々木旭と19歳の高井幸大が務めている。

 パリ・オリンピックで大活躍した高井は試合ごとに安定感を増し、空中戦ではどんな相手とも互角以上に戦えるし、俊足を生かして広い範囲をカバーできるようになった。また、佐々木もこのところ安定感を増し、2人ともボールを持ちあがって攻撃の起点にもなれる。素晴らしい、将来性豊かなセンターバックだ。

 ただ、横浜FM戦での2連続失点の場面をみると、やはり経験不足によるミスが出たようだ。川崎は71分にセンターバックとして車屋紳太郎を入れ、佐々木を左サイドバックに移したが、やはりDFラインの一角には車屋のような経験豊富な選手を入れたほうが良いのかもしれない。

 ただ、3点を追う中で、終盤にも猛攻をかけて、川崎は89分には途中出場のエリソンが強烈なボレーシュートを決めて追いすがった。

 今シーズン前半戦で、川崎は良いところをまったく出せずに敗れるような試合が多かった。だが、この日の横浜FM戦は数多くのチャンスで決めきれなかったことと、守備の集中が切れたことが敗因だった。つまり、内容的にはけっして劣っていたわけではなく、同じ負けであっても、今シーズン前半戦の頃とは意味が違う。

 若いセンターバックも、一つ苦い経験をしたわけで、これも成長の糧となるはずだ。