【10番・大島僚太がJ1川崎に与える変化(1)】大島が家長昭博と横浜FM戦に話していた「相手が僕なのか、アキくんなのかを選ばなきゃいけないタイミングを作り出そう」の意識

AI要約

川崎フロンターレと横浜F・マリノスの試合での攻防を描いた記事。川崎の得点チャンス、大島のパス、そして家長のシュートを中心に解説。

大島の戦略的なパス、家長の動き、そして試合結果に焦点を当てた詳細な内容。

湿度66%の中での過酷な状況下で行われた試合の模様と、川崎の連勝ストップについても触れられている。

【10番・大島僚太がJ1川崎に与える変化(1)】大島が家長昭博と横浜FM戦に話していた「相手が僕なのか、アキくんなのかを選ばなきゃいけないタイミングを作り出そう」の意識

 ゴール前のこぼれ球に川崎フロンターレのFW家長昭博が突っ込む。左足から放たれたシュートは必死にブロックした横浜F・マリノスのDF畠中槙之輔、とっさに反応したGKポープ・ウィリアムのともに右足に当たって左CKに変わった。

 川崎のホーム、Uvanceとどろきスタジアムで17日に行われたJ1第27節。両チームともに無得点で迎えた神奈川ダービーの32分に訪れた、川崎の最大のチャンスを数秒だけさかのぼると、MF大島僚太の決定的なパスに行き着く。

 マリノスのボランチ、渡辺皓太とのデュエルを制して、ペナルティーエリアの右後方でボールを持った大島はすぐにはパスを出さない。右サイドでフリーの状態でいた右サイドバック、ファンウェルメスケルケン際は大島の意図をこう明かす。

「おそらくあのタイミングで、(対面の)選手がどちらになびいているのかを見ていると思う。逆に相手も見られている感覚もあって、やりにくいのかな、と」

 FW山田新、マルシーニョ、家長、MF脇坂泰斗とペナルティーエリア内に川崎の選手が4人も入ってきている状況で、大島の対面にいたFWエウベルは絞りきれない。次の瞬間、背番号10はボールを右側へ、ちょっとだけ動かした。

 つられるようにエウベルの重心も傾く。必然的に広がったエウベルの股間を狙った大島のパスは、青写真通りに鮮やかに際のもとへと通った。右サイドで縦関係を組む状況が多い家長と、事前に話し合っていた作戦を際がこう明かす。

「相手が僕なのか、アキくん(家長)なのかを選ばなきゃいけないタイミングを作り出そうとずっと話していた。(大島)僚太くんはそこをしっかり見てくれるので、あとは僕たちが走って、空いているところへいかに押し込めるか、という形になる。見てくれる、という安心感がある部分で、僚太くんは本当にやりやすい」

 エウベルの股間を突いたパスに反応した際は、ワンタッチでクロスを放つ。ボールは危機を察知して戻ったDFエドゥアルドの足、畠中の体をかすめてゴール中央へ詰めてきた家長の前へこぼれ、冒頭で記した決定機につながっていった。

「誰にいつ、どんなパスを出したのかあまり覚えていないです。もうきつくて」

 試合後の取材エリアで、大島は思わず苦笑いを浮かべた。キックオフされた19時の気温が30.7度、湿度66%と不快指数がマックスの状況で、戦列復帰後で初めて3試合連続で先発。最長タイの78分間プレーした直後の偽らざる本音だ。

 試合はスコアレスで迎えた後半に、PKで先制したマリノスがその後も2ゴールを追加。必死の反撃に出るも、1点を返すにとどまった川崎の連勝は3で止まった。それでも、不振に苦しんだ前半戦に喫した黒星とは内容がまったく異なっていた。

(取材・文/藤江直人)