パリ五輪では「過去最多193人の選手がLGBTQを公表」も「日本人はゼロ」…なぜ日本では性的マイノリティに対しての偏見がなくならないのか?

AI要約

LGBTQアスリートが直面する困難や障壁について、実際の取材を通じて明らかにした新刊『わたしたち、体育会系LGBTQです』の内容について紹介されています。

日本のスポーツ界におけるLGBTQの現状や課題に焦点を当て、当事者の複雑な思いや社会との摩擦を明らかにしています。

本書は日本では珍しいLGBTQアスリートにフォーカスを当てた貴重なノンフィクションであり、様々な視点からの貴重な情報が提供されています。

パリ五輪では「過去最多193人の選手がLGBTQを公表」も「日本人はゼロ」…なぜ日本では性的マイノリティに対しての偏見がなくならないのか?

LGBTQという言葉は世間に広まったけれど、日本のスポーツ界は相変わらずマッチョで、理解が進んでいるとは言い難い。中には「カミングアウトは自殺と同じ」語るゲイの陸上選手も。そんなアスリートたちの本音に迫った新刊『わたしたち、体育会系LGBTQです』を監修した、立命館大学産業社会学部教授の岡田桂氏に、「スポーツとLGBTQ」の現状を聞いた。

「そうなんだ。じゃあ今度、二丁目連れてってよ!」

特待生として大学でボクシングをしていた貴人(仮名)は、面倒ごとを避けたくてそれまで自身がゲイであることを隠してきた。しかし、大学卒業後、同じ学生寮で暮らしていた親友にカミングアウトすると、友人の反応は想像以上にあっさりしたものだった。

これは書籍『わたしたち、体育会系LGBTQです』の中のくだりだ。本書は9人のLGBTQアスリートへの取材を元に、性的マイノリティであることを隠しながら、大学など高いレベルで競技を続ける苦しさをさまざまな角度から描いた、日本でこれまでになかったノンフィクション・ドキュメンタリーとなっている。

冒頭の友人の言葉は、日本の若い世代の間ではLGBTQへの偏見が比較的薄らいでいることがわかる例だが、それでも当事者からすればそう簡単に公表できることではない。

とくに日本はその傾向が強いようで、熱戦が繰り広げられたパリ五輪において、自らLGBTQと公表した参加者は過去最多193人に上ったが、日本人からはひとりもいなかった。

はたして日本スポーツ界が取り巻くLGBTQの現状とは? 本書を監修した立命館大学産業社会学部教授でスポーツとジェンダーについて研究する岡田桂(おかだ・けい)氏に話を聞いた。

――LGBTQアスリートたちの「恋」と「勝負」と「生きづらさ」をテーマとした本書の監修を依頼された際は、どのように思われましたか?

岡田桂(以下、同) 本書は「月刊サイゾー」にて連載されていたものを大幅加筆したものですが、実は連載当時から“すごいな”と思いながら読んでいたんです。

――どのあたりが「すごい」と?

私も研究者でLGBTQアスリートに取材を試みることがありますが、日本のスポーツ界はまだまだ保守的ですから、当事者の方たちはリスクを考えてなかなかインタビューを受けてくださらない。とくにゲイ男性は何度かコンタクトをしても断られることが多かったです。

そのため、承諾してくれる方を探してこのようなライフヒストリーにまとめることができた本書は、非常に貴重な本だと思います。

――これまでの日本にはなかなかなかった書籍だということでしょうか。

LGBTQアスリート当事者へのインタビューはアメリカを中心とした英語圏なら2000年代からある程度は出ていました。しかし、日本のような東アジア文化圏だと先述のとおり、なかなかインタビューに応じてもらえないことから、こうした本はほぼ出ていなかったと思います。