伝説のストリッパー・一条さゆりが音楽デビュー!出所後も舞台に上がり続ける彼女がどうしても忘れられなかった「快感」

AI要約

1960年代ストリップの頂点に君臨した伝説のストリッパー、一条さゆりの生涯と昭和の日本社会の変化を描いた『踊る菩薩』からのエピソード。

一条さゆりの復帰公演の最終日の舞台裏での様子や刑務所での経験、新たな挑戦についてのエピソード。

一条さゆりの人生の波乱万丈さや再起の闘いを通じて、彼女の強さと人間味が浮かび上がる。

伝説のストリッパー・一条さゆりが音楽デビュー!出所後も舞台に上がり続ける彼女がどうしても忘れられなかった「快感」

1960年代ストリップの世界で頂点に君臨した女性がいた。やさしさと厳しさを兼ねそろえ、どこか不幸さを感じさせながらも昭和の男社会を狂気的に魅了した伝説のストリッパー、“一条さゆり”。しかし栄華を極めたあと、生活保護を受けるに至る。川口生まれの平凡な少女が送った波乱万丈な人生。その背後にはどんな時代の流れがあったのか。

「一条さゆり」という昭和が生んだ伝説の踊り子の生き様を記録した『踊る菩薩』(小倉孝保著)から、彼女の生涯と昭和の日本社会の“変化”を紐解いていく。

『踊る菩薩』連載第81回

『「陰毛が一本でも見えたらアウト」...警察の影におびえながらも客を楽しませるために“ギリギリ”を攻め続けた伝説のストリッパー・一条さゆり』より続く

復帰公演の最終日は1月8日である。一条が舞台であいさつすると、客席から声が掛かった。

「姉さん、ちらっと見せたら?」

一条はそれに笑顔で応じる。

「今日まで無事に終えましたからね」

募金箱「あゆみの箱」を回す。客がカネを入れ、声を掛ける。

「おっぱい見せて」

「顔がきれいやね」

一条は応える。

「おっぱいくらいで終わりましょうね。許してね。お客さんには立ち直った私を見てほしいのよ」

自分の年齢が気になるらしい。

「みんな若いでしょう。楽屋で自分の身体を見て、あかんわと思って、考えましたよ」

「そんなことない」

客席から大きな声が飛ぶ。募金は6万円になった。一条は舞台で、刑務所の話を始める。

「いい勉強になりました。向こうにいる人(収容者)の話も聞き、いろんな生活も見、石鹸がないと言っては喧嘩をし、女同士であんなことあるんかと。裁かれて本当によかった。初めて女らしくなった。自分の身を振り返ってよかったです。お上の方、裁判所の方、本当にありがとうございました」

千葉まで来ても、ちゃんと店の宣伝はする。

「あさってからまた和風スナック一条を開けます。みんなここに来ていることを知らないんです」

レコードデビューについても報告し、伴奏も付けずにアカペラで独唱した。