【J2仙台・森山佳郎監督インタビュー(4)森山ベガルタで何が変わったのか】仙台の選手に求める「変化する力」……相良、有田ら若手への期待と、「ポジティブな影響を与える」というベテラン選手

AI要約

昨季3ゴールだった相良竜之介や中島元彦、新人の有田恵人など若手選手の成長が目覚ましい

左SBの人材難が課題で、森山監督は選手が自ら変化していく力の重要性を強調

チーム全体がポジティブな変化を遂げており、厚い選手層を築きJ1昇格を目指している

【J2仙台・森山佳郎監督インタビュー(4)森山ベガルタで何が変わったのか】仙台の選手に求める「変化する力」……相良、有田ら若手への期待と、「ポジティブな影響を与える」というベテラン選手

 森山佳郎監督就任後、ベガルタ仙台は着実に順位を上げ、躍動感あるサッカーを展開している。同時に目を引くのが、若いタレントたちの成長だ。

 昨季3ゴールだった相良竜之介がここまで7点を奪っているのを筆頭に、中島元彦もキャリアハイの8得点。中央大から加入した大卒1年目の有田恵人も出場数を伸ばしており、”育成のスペシャリスト”らしい卓越した手腕を新指揮官は見せているのである。

「相良は出来不出来もありますけど、今季はまずまずのパフォーマンスを見せていますね。有田や名願斗哉らも上がってきています。右サイドバックの田椋汰、左の石尾陸登も重要な役割を担ってくれていて、若手が伸びているのは嬉しいこと。中堅の中島や郷家友太も大車輪の働きを見せてくれているのは確かです。

 ただ、石尾がケガで離脱した6月以降、最終ラインが不安定になったのは課題。内田裕斗もケガで使えない状況で、今は田を左に回していますが、左サイドバック(SB)がアキレス腱なのは1つの事実です。

 左SBの人材難というのは、日本サッカー界全体の問題。J2全体を見回しても、力があるなと思っていた徳島(ヴォルティス)の橋本健人が(アルビレックス)新潟に引っ張られたばかり。新保海鈴(山口)も存在感を高めていますが、各チームとも苦労している。左SB問題は我々が向き合わなければいけないところです」と森山監督は収穫と課題を口にする。

 そういった中、大きく伸びる選手というのは、自分で考えて変化していける選手。指揮官は長い育成年代の指導経験を踏まえて、そう考えているという。

「相手も対策してきますし、こちらのストロングポイントを封じようとあの手この手を使ってくるのがサッカーの世界。スピードのあるサイドアタッカーなら、タテに止められた時に中に持ち込んでシュートもある、周囲と連携しながらゴール前に行く力もあるというように、自分を変化させていく力が必要。それがないと、対策を打たれただけで終わってしまう。僕が指導しているチームの選手にはそうなってほしくないし、幅広い選択肢を持ってもらいたいんです。

 自チームの状況、敵の出方を考えながらプレーを選択できる選手という観点で見ると、今の仙台ではベテランの長澤和輝が優れていますね。昨年途中からウチに来たけど、本人としては『全然ダメだったよね』というところからスタートしたから、より貪欲に取り組めていると思います。彼自身も『仙台で変わらないといけない』という強い危機感をピッチ上で示している。

 その姿勢がポジティブな影響を与えていますし、他の選手も『自分も変われるんだ』『全員にチャンスがあるんだ』と思って取り組んでくれている。今のチームの雰囲気は素晴らしいですね」

 そうやって1人1人が確実に前向きな変化を見せている今季の仙台。やはり森山監督の厳しくも情熱的なアプローチによるところが大なのだろう。オナイウ情滋、工藤蒼生、鎌田大夢ら清水戦でベンチスタートだった面々もグッと伸びてくれば、シーズン終盤には選手層がより厚くなり、J1昇格も現実味を帯びてくる。そういった展開を期待したいものである。

【もりやま・よしろう】

1967年11月9日生まれ、熊本県出身。現役時代はサンフレッチェ広島などでプレーし、サッカー日本代表としてもキャップ数を重ねる。引退後は指導者の道を歩み、サンフレッチェ広島ユースでコーチと監督を歴任。その後、日本サッカー協会で育成年代の監督を務め、U―17日本代表監督としてFIFA U―17ワールドカップに出場した。今季からベガルタ仙台の監督を務める。

※記事内のデータはすべて8月9日執筆時点

(取材・文/元川悦子)

(この記事の続きへ)