快挙達成の川崎のストライカー・山田新はなぜゴールを奪えるのか。鬼木達監督や小林悠らが語る24歳の成長ぶり

AI要約

J1第26節ではFC東京と川崎が対戦。川崎は3-0で勝利し、山田新が2ゴールを挙げる活躍を見せた。

山田新はエリソンや小林悠と競い合いながらも、努力を重ねてレギュラーの座を確保し、チームに貢献している。

山田新はスピードとフィジカルの強さを持ち、ストライカーとしてのゴールへの渇望から成長している。今後の活躍に期待が寄せられる。

快挙達成の川崎のストライカー・山田新はなぜゴールを奪えるのか。鬼木達監督や小林悠らが語る24歳の成長ぶり

[J1第26節]FC東京 0-3 川崎/8月11日/味の素スタジアム

 J1の26節ではFC東京と川崎が対戦。ここ2戦は1分1敗のFC東京に対し、川崎は前節、リーグ戦で今季初の連勝を記録して多摩川クラシコに臨んだ。

 序盤、ハイプレスから攻め込んだのはFC東京だったが、15分、20分にクロスからのヘッドでFW山田新が2ゴールを決めて川崎が先行。後半にはパリ五輪帰りのCB高井幸大がセットプレーからチーム3点目を奪い、川崎が3連勝を収めた。

 この日のヒーローもFW山田だった。前々節の柏戦(〇3-2)、前節の神戸戦(〇3-0)でそれぞれ2ゴールを奪っていた男が、FC東京戦でも再び2ゴール。3試合連続での複数得点はJリーグ通算9人目、日本人としては中山雅史、大久保嘉人に次ぐ通算3人目の快挙となった。

 川崎アカデミーで育ち、桐蔭横浜代を経て、川崎に加入して2年目。明るく、ストイックな性格で今季は副キャプテンに任命された男は、エリソン、バフェティンビ・ゴミス、小林悠といった錚々たる先輩ストライカーとの競争で、ベンチスタートや自ら希望するCFではなくウイングやサイドハーフでの起用も続いていた。

 それでもコツコツと積み上げ、レギュラーの座を奪った姿には熱いものがある。

 FC東京戦後、鬼木達監督も評した。

「シンに関しては日々トレーニングしているなかで、当然、狙いのところで取ってくれたというのはありますし、ヘディングシュートというところで言うと、いつも最後まで残ってヘディングの練習をしたり、戸田(光洋)コーチと積み重ねているところが出たのかなと思いますし、そういう努力が報われるのは監督の立場としても嬉しいです。満足することなく続けてほしいです。

 チームの考え方としては彼のようなパワーのある選手が、後半の途中から出てきたりだとか、ゲームを変えられるひとりの選手としてはスタートにいても後にいても非常にありがたい存在なんですが、長くプレーさせることで伸びていくところはありますし、今までだったらゲームから消える時間もありましたが、そこから最終的に点を取れるところにいつもいようとする、その回数が増えてきたので、相手にとって何が脅威かといったら、長い間、彼が出ることは、チームとしてアグレッシブに戦えますので、そういうもので今を勝ち取ったところになります」

 クロスからのフィニッシュをひとつの課題として掲げ、長い間、トレーニングを重ねてきた姿は非常に印象深い。

 

 筋骨隆々な24歳の魅力はスピードとフィジカルの強さ。技術力に関してはまだ改善の余地があるだろうが、2、3人に囲まれても無理やりにでもシュートまで持ち込む力強さと、前線で身体を張ったキープでチームを助ける。

 さらに魅力的なのは、本人もより今季は言葉に出すようにしているという、ストライカーとしてのゴールへの渇望だ。点取り屋はこうでなくちゃと言えるギラギラ感が彼にはある。

 今季の開幕直後の磐田戦では、自ら奪ったPKを“俺が蹴るんだ”とボールを決して放さず、決めきったシーンも印象深い。

 当時、先輩FWの小林は目を細めていた。

「あのPKはあいつが勝ち取ったもの。あそこでもし決められなくても、あいつの力に変わっていくと思うし、今日はしっかり決めてくれた。普段から真面目にやっている選手なので、期待できる若いやつが出てきたなと、僕は嬉しいですね。まさにギラギラ感。自分が試合を変えてやるんだぞという想いが前面に出ている選手なので期待できます。能力は凄いものがあるので、点を決めていければ、より成長していけると信じています」

 そして小林は改めてFC東京戦後に山田の成長ぶりを語ってくれた。

「スゴイですよ。勢いもあるし、身体も強いし1点目、(クロスからのヘッドで)あれを持っていけるのはスゴイ。あいつ、今日は入りは良くなかったし、落としでミスをしたりしていたけど、ゴールを決めればFWはノッテくるので、本当にノッテいますし、このままいってほしいですね」

 一方で4-2-3-1のトップ下でCFの山田とコンビを組む、パサーで主将の脇坂泰斗はさらなる成長にも期待する。

「もっと背後に出てきたりだとか、駆け引きなどはより求められると思いますが、自分の形に入った時、背負った時など、今日のヘディングだとかもストロングを出せれば、それを出させられるように、こっちもなってきているので、より彼も生きていますし、良いサイクルで本人もやれているんじゃないかなと思います」

 まだ粗削りな面は残す。だが、自らにプレッシャーをかけるようなギラギラ感と真摯にトレーニングを重ねる姿が、ゴール量産の山田を支えているのは間違いない。

 川崎の新ストライカーとして大いに期待だ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)