ドルフィンズアリーナでの最後の七月場所、横綱照ノ富士が有終のV10で59年の歴史に幕

AI要約

59年間の歴史を持つ名古屋での『大相撲 七月場所』が終了し、最後の大会で横綱照ノ富士が史上15人目の10回目の優勝を果たした。

愛知県体育館で誕生した数々のドラマや伝統的な相撲観戦の楽しみ方から、千秋楽の興奮に至るまで、『七月場所』は多くの感動を生み出してきた。

新たな物語の幕開けとなるIGアリーナを目指す力士たちの熱い戦いが、次の興奮を待っている。

ドルフィンズアリーナでの最後の七月場所、横綱照ノ富士が有終のV10で59年の歴史に幕

7月28日、ドルフィンズアリーナでの『大相撲 七月場所』が59年間の歴史に幕を閉じた。古くからのファンには愛知県体育館と言った方が通りはいいだろう。名古屋で『七月場所』が始まったのは昭和33年のこと。かつて存在した名古屋市金山体育館で行われた。その後、昭和40年より名古屋城の二の丸御殿跡に建設された愛知県体育館へ戦いの舞台を移した。

昭和40年の初開催での横綱大鵬の17回目の優勝をはじめ、昭和47年の前頭4枚目高見山の外国出身力士による初優勝、昭和56年大関千代の富士が横綱北の湖との千秋楽相星決戦を制して綱取りを決めた一番、平成5年横綱曙が大関貴ノ花、関脇若ノ花を連破した優勝決定巴戦、令和3年横綱白鵬の愛知県体育館最多となる8回目、自身最後のV45などなど、同所ではあまたのドラマが誕生した。

ドルフィンズアリーナ最後の場所でもクライマックスにふさわしいドラマが待っていた。12勝3敗で星が並んだ横綱照ノ富士が前頭6枚目隆の勝との優勝決定戦を制して、史上15人目となる10回目の賜盃を手繰り寄せたのだ。これが初めての『七月場所』優勝となった横綱は「名古屋で応援してくださった方たちの前で『1回でもいいからいい姿を見せたい』という思いでがんばった。入門してから14年間、毎日目指していた相撲が今場所『ちょっと完成できたかな』という実感があるので、もっと出来るように鍛えていきたい」と次なる栄冠を見据えた。

新たな物語を紡いだドルフィンズアリーナでは変わらぬ千秋楽の風景があった。櫓太鼓が14日目までより30分ほど早い開場を知らせる。10時過ぎからはじまる序ノ口の取組に熱心な好角家が土俵に視線を送る。土俵では序ノ口、序二段、三段目、幕下と取組が続く。会場散策をすれば、場外広場にはからあげや焼きそば、アイスクリームにわらびもちなど6台キッチンカーが並び、場内ではちゃんこ売店も。ちゃんこの味はソップ、塩、味噌の3種類が日替わりで登場。千秋楽のこの日は15日間通しメニューの柚子塩冷やしちゃんこと味噌ちゃんこをご用意。ちなみに17時まで再入場は何度でも可能なので、腹ごしらえや名城公園の散歩も心行くまで満喫できる。1階正面総合案内前には大相撲ガチャがズラリ。大相撲に関するカプセルトイの数々から何が出るかはお楽しみ。2階親方売店すも~る名古屋支店では相撲協会オリジナルグッズを親方衆が企画・販売する。

相撲観戦のお供と言えば、弁当やおつまみ、ビール、お茶菓子などが付いた飲食セット、湯飲みや手ぬぐいなど漆器・陶器・布・紙製品で大相撲関連のデザインを施した相撲協会公認の品が2点付く土産である。マス席でお重に入った特上弁当を広げながらの相撲観戦はまさに醍醐味。定番だけではない。企画チケットも人気を博している。7月2日に関取と記念撮影ができる特典の付いた、3~6日目・9~13日目の平日4人マスB席や売店クーポン付引換券付き4人マスB席なども好評だ。

土俵上に話を戻そう。13時半過ぎには十両土俵入。会場も徐々に客席が埋まっていき、新鋭や確かな実力者たちが土俵を沸かす。15時過ぎの中入後には幕内土俵入、横綱土俵入と続き、客席は満席に。勝ち越しか、負け越しか、天国と地獄を分ける千秋楽には力の入った相撲が多い。土俵際の際どい攻防に歓声とため息が飛び交う。3敗の隆の勝が大の里を押し出し、逆転優勝に望みをつなぐと三役揃い踏みからから結びの一番で大関琴櫻が8度目の対戦で照ノ富士に初勝利。優勝決定戦が決まり、館内のボルテージは上がる一方である。

14日目隆の勝に一気に寄り切られ、最後の最後に連敗を喫した照ノ富士と中日から8連勝で締め括った隆の勝。勢いは隆の勝にありと思われたが、照ノ富士はもろ差しを許しても慌てず騒がず。落ち着いて右を巻き替え、右からすくって体を入れ替えると寄り切って優勝を決めた。劇的V10に酔いしれた観客は表彰式を見届けた。照ノ富士の喜びの声に歓声と拍手を送り、殊勲賞・大の里、敢闘賞・隆の勝、技能賞・平戸海の三賞受賞を祝った。そして出世力士手打式、神送りの儀式をもって、『七月場所』はその長い歴史に幕を閉じた。正面口では優勝旗を手にした熱海富士を従えた照ノ富士がドルフィンズアリーナ最後の優勝パレードを実施。取り囲んだ観衆の声援に応えていた。

二桁優勝の目標を叶えた照ノ富士は次なる目標に照準を合わし精進し、史上初となる初土俵から4場所連続三賞受賞を果たした大の里は次の場所で再び大関取りを目指す。賜盃をあと一歩のところで逃した隆の勝もさらなる高みへ虎視眈々。一年後のIGアリーナの土俵上ではどんな様相を呈しているのか。ドルフィンズアリーナから両国国技館、福岡国際センター、そしてIGアリーナへと、大相撲は一場所一場所、一日一日、一番一番、新たな歴史を積み上げていく。9月8日(日)~22日(日・祝)・両国国技館で開催される『九月場所』のチケットは本日8月6日午前11時から7日(水)午後11時まで先行抽選プレリザーブ、8月10日(土)午前10時より一般発売。