《女子ボクシング性別騒動》「彼女の態度は恥」棄権→挨拶拒否→号泣イタリア人もケリフも…誹謗中傷と「Webでの識者コメント」にえぐられる心

AI要約

イマネ・ケリフとアンジェラ・カリーニの対戦で起きた性別と競技に関する論争が世界的に注目されている。

カリーニの棄権が五輪とジェンダー問題に再び火をつけ、イタリアやアルジェリアで論争が巻き起こっている。

イタリアの女性首相もカリーニを擁護し、IOCのポリシーに疑問を投げかけている。

《女子ボクシング性別騒動》「彼女の態度は恥」棄権→挨拶拒否→号泣イタリア人もケリフも…誹謗中傷と「Webでの識者コメント」にえぐられる心

 パリ五輪、“性別と競技”をめぐって女子ボクシングで世界を巻き込んだ議論となっているのは66kg級でメダル獲得が確定したイマネ・ケリフと、その対戦相手の棄権騒動だ。対戦相手の母国であるイタリアを中心にした論争はどのようなものになっているのか。イタリア在住日本人ライターからのレポート。

「ノネ・ジュスト(こんなの間違ってる)!」

 リング上のアンジェラ・カリーニ(イタリア)は涙声で何度も小さく叫んだ。

 1日、パリ五輪・女子ボクシング競技66kg級の試合で、彼女はイマネ・ケリフ(アルジェリア)と対戦した。ケリフはIOCが参加を認定した“インターセックス”選手だ。“性染色体や性ホルモン、外性器等の生来性的特徴に先天的変動性を持つ人”と定義されている。

 試合開始のゴングの後、ケリフが出した2発のパンチを顔面にもらったカリーニは、わずか46秒で棄権した。規則に従い、レフェリーがケリフの左手を掲げた後、カリーニは彼女と目を合わせず、マットに膝をついて涙を流した。

 カリーニの棄権は五輪にくすぶるジェンダー問題にあらためて火をつけ、イタリアやアルジェリアを巻き込み、論争を過熱させている。

 五輪視察のためにパリ市内のイタリア代表団本部を訪れていた女性首相ジョルジャ・メローニは、カリーニの棄権が発覚した直後、彼女を全面擁護するコメントを出した。

「アンジェラ・カリーニの行動を高く評価したいと思います。私の見解では、同じ武器で戦う試合ではなかった。ここ数年、IOCのやり方は目に余ります。男性のDNAを持つ者を女性の競技に参加させるべきではありません。誰かを差別するのではなく、女性アスリートがイコールコンディションで競技できる権利を守るために申しているのです」

 カリーニの本職は国家警察隊隊員、つまり公務員だから首相が国家の長として彼女を擁護したのは当然だが、右派の領袖メローニがこの事件を票田である保守派への政治的アピールに利用したいのでは、という憶測も見え隠れする。