絶対王者“遺恨”の接触決着でグロンホルムが今季初勝利。クララも3位表彰台を獲得/WorldRX第2戦

AI要約

2024年WorldRX第2戦で、ニクラス・グロンホルムが初勝利を挙げる。

クリストファーソンとハンセンが激しい衝突を繰り広げる。

クリストファーソンが挑戦に応えて優勝し、ケビン・ハンセンに失点を与える。

絶対王者“遺恨”の接触決着でグロンホルムが今季初勝利。クララも3位表彰台を獲得/WorldRX第2戦

 新たな“バトル・オブ・テクノロジーズ”の時代が幕を開けた2024年WorldRX世界ラリークロス選手権の第2戦が、7月27~28日に“赤い大釜”の異名を持つハンガリーのニーラドで開催され、開幕連勝発進を決めた“絶対王者”ヨハン・クリストファーソン(フォルクスワーゲン・ポロKMS 601 RX)が、ダブルヘッダー初戦で劇的な衝突決着を演じることに。

 結果、引き続き電動最高峰のRX1eモデルで出場するニクラス・グロンホルム(CEディーラー・チーム/PWR RX1e)が、新しいデュアルテクノロジー時代初勝利を挙げ、WorldRXキャリア通算8勝目を祝った。

 今季より導入されたバトル・オブ・テクノロジーズの構想に基づき、新たに持続可能燃料採用の内燃機関(ICE)搭載モデルを開発したクリストファーソン・モータースポーツ(KMS)に対し、長年プジョーを走らせるハンセンWorldRXチームや、オリジナル車両で挑むCEディーラーチーム・バイ・ボルボ・コンストラクション・イクイップメントのライバルらは、電動最高峰の『RX1e』を引き続き投入する。

 その第2ラウンドにて、ヒートレースから優位に立ったのは電動オフロード選手権エクストリームEでも連勝を飾るなど、好調さを披露するケビン・ハンセン(ハンセンWorldRXチーム/プジョー208 RX1e)で、選手権首位クリストファーソンは最初のヒートレースこそ順当な結果だったものの、続くヒート2で技術的な問題により敗退を余儀なくされることに。

 しかし修復して迎えたセミファイナルでは、ジョーカーラップ後にグロンホルムとの激しい並走デュエルを制し、シリーズ6冠の底力を遺憾なく発揮。ファイナル最前列獲得の位置まで這い上がってくる。

 新たに提携する技術企業集団の名を冠しKMS・ホース・パワートレインとして参戦するサステナブルフューエルによるICE搭載車『フォルクスワーゲン・ポロKMS 601 RX』は、ポールポジションの位置から電動モデルと互角の蹴り出しでターン1へ向かうと、その隣で「譲るつもりはない」と主張するかのような動きを見せたケビンの『プジョー208 RX1e』と交錯。

 ホールショットを掛けた意地の張り合いにより、お互いの接触は避けられず。ここで2台とも後方からバリアに突っ込み、ハンセンはその場で立ち往生し、のちに失格処分。再スタートを切ったクリストファーソンも、サスペンション損傷により最終的にクルマを止める事態となった。

 この遺恨バトルの直後、ターン2でも接触の勝負が繰り広げられ、グロンホルムともう1台のプジョーをドライブする2019年王者ティミー・ハンセン(ハンセンWorldRXチーム/プジョー208 RX1e)が衝突スピンに追い込まれる。その結果、オーレ・クリスチャン・ベイビー(KMS・ホース・パワートレイン/フォルクスワーゲン・ポロKMS 601 RX)に5秒以上の差をつけ、グロンホルムが今季初のトップチェッカーを受けた。

「浮き沈みの激しい1日だったが、大事なときにトップで終えることができてうれしいよ」と、今季3度目のファイナルで初優勝を飾ったグロンホルム。

「このトラックはドライブしやすいわけではないが、とてもクールで、間違いなくカレンダーには良い追加となった。2022年以来、多くの努力を重ねてきたが、ゆっくりと、しかし確実に、僕らが目指す場所に近づいているね」

■女性ドライバーのクララ・アンダーソンが今季2度目の表彰台

 一方、2年前のスペイン・カタルーニャでも接触裁定でクリストファーソンにペナルティが科され、ケビンがランオフに大きく弾き出されるアクシデントを経験していた両名は、停車直後に身振りで不快感を示したハンセン・ブラザースの弟が“絶対王者”への不快感を露わにした。

「6回の世界チャンピオンを自称する人が、敬意を持ってレースをできないことに失望している」と続けたケビン。「僕の前輪は明らかに彼の後輪より前にあったが、ヨハンがルールを尊重しなかったことで僕はすべてを手放さなければならなかった。さもなければ、彼は僕を高速でコンクリートの壁に押し込んでいただろう」

「それがどんな感じかは想像に難くない。僕は分別のある大人だから、放っておけばいいと思ってはいるが、明らかにスポーツマンシップに反する。これが続くようなら、彼も僕と同じ運命に遭うだろう」

 そんな怒り心頭のケビンに対し、クリストファーソンも譲らない見解を示す。

「写真を見れば、すべてがわかると思う。あれはレースでは起こり得る類のもので、ただそれだけだ。長い間、結果が出ていない場合はどうしても結果が欲しい。そういうときはもちろん勝ちたいと思うだろう。よく分かるが、そういうものだ」

 この事故を調査したスチュワードは両ドライバーにペナルティ裁定を下し、クリストファーソンは戒告、ハンセンは失格処分との判断がなされた。

 その失望から奮起したクリストファーソンは、約24時間後には反転攻勢に転じると、ヒート2こそティミーやグロンホルムにサンドイッチされ窮地に陥るも、損傷したマシンでファステストを記録。その後のセミファイナル、ファイナルでも主導権を譲らず、キャリア通算43勝目を手にした。

「昨日は最高の日ではなかったが、今日はずっと良かった! 昨夜は修理に一生懸命取り組んでくれて、とても速いクルマを用意してくれたチームには本当に感謝している」と語った35歳のチャンピオン。

「無理にプッシュしたわけではないし、ただスムースにドライブしてミスをしないように努めた。もし本当に“キラー”ラップが必要だったなら、もっと速く走れたはずだよ……」

 その背後では、オープニングラップでジョーカーを消化した僚友クリスチャン・ベイビーがKMSのワン・ツーを完成させると、開幕2位表彰台のクララ・アンダーソン(CEディーラー・チーム/PWR RX1e)が電動チーム最高位の3位に入る結果に。

 彼女は週末最後のヒートで雨天用タイヤを装着するという賭けに出ると、ハンセン・ブラザーズの2台を仕留める粘り強い走りを見せ、今季2度目の価値あるポディウム獲得となった。

 最後までそのアンダーソンを追い掛けた兄のティミーを含め、これでハンセンWorldRXチームとしては開幕2戦4ヒート連続で表彰台を逃す、まさかの幕開けとなった2024年シーズン。続く第3戦は78月17~18日にベルギーのメテで、同じくダブルヘッダー・ラウンドが予定されている。

[オートスポーツweb 2024年07月29日]