「中谷潤人が井上尚弥を倒しても驚きはない」圧巻ボティ一撃KOに英国人記者も言葉失う「私の中では尚弥vs中谷こそが最高のマッチアップ」

AI要約

中谷潤人(M.T)が衝撃的なKOを達成し、WBC世界バンタム級タイトルを初防衛。

次なるスーパーファイト候補として井上尚弥(大橋)との統一戦路線が注目される。

スーパースター候補としての中谷の強さと技術に、英国人ライターから称賛の声。

「中谷潤人が井上尚弥を倒しても驚きはない」圧巻ボティ一撃KOに英国人記者も言葉失う「私の中では尚弥vs中谷こそが最高のマッチアップ」

 中谷潤人(M.T)がまた衝撃的なKOを生み出した。7月20日、両国国技館で行われたWBC世界バンタム級タイトル戦で中谷は同級1位のビンセント・アストロラビオ(フィリピン)に初回KO勝ち。ボディ一発で相手を悶絶させる圧巻の勝ち方で初防衛を果たし、戦績を28戦全勝(21KO)に伸ばした。

 26歳にして3階級制覇を果たし、いよいよ統一戦路線を目論むスーパースター候補は次戦で誰と戦うのか。今や日本以外のファンからも待望されるようになった井上尚弥(大橋)とのスーパーファイトはいつ頃行われるべきなのか。

 試合後、リングマガジンの元編集人であり、現在はスポーティングニュースで健筆を振るう英国人ライター、トム・グレイ氏に意見を求めた。グレイ氏は軽量級、アジアのボクシングにも精通しており、その言葉には常に説得力がある。

※以下、グレイ氏の一人語り【全2回の1回目/「那須川天心」編も公開中】

 中谷の強さは今回も見事でした。正直に言いますが、アストロラビオの戦歴を見渡しても、中谷と同じレベルの選手との対戦経験はありませんでした。それゆえに、前半で試合が終わることを予想してはいました。それでも初回KOとは考えてなかったですし、ボディでの決着ながら“年間最高KO”の候補になるのではないでしょうか。

 フィニッシュブローは非常に素早く、アストロラビオの腹のど真ん中を撃ち抜いたパンチでした。通常、ボディでのKOはレバーを叩いたものが多いのですが、そういった意味でもエキサイティングなKO劇。スローモーションで何度か見ましたが、あの左パンチで相手の肋骨の一部を砕いたんじゃないかと思ったほどでした。アストロラビオは完全に呼吸を奪われ、破壊的なKOシーンになりましたね。

 じっくり見ようと腰を落ち着けようとしたところで、もう試合は終わってしまいました。もちろん何が起こるかわからないことは理解していたので、目を離したわけではありません。ただ、いかに上昇一途の中谷とはいえ、オープニングラウンドにボディへのワンパンチで倒してしまうなんて誰が考えたでしょう? 

 特に今戦は中谷にとって、バンタム級でまだ2戦目に過ぎないのです。2月の前戦ではアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)を6回で沈めたのに続き、これで新しい階級で2試合連続の前半KO勝利になります。井上尚弥同様、階級を上げてもその強烈なパンチングパワーを保っていると見るのが妥当なのでしょう。

 これも井上尚弥と同じく、中谷には技術面でも文句のつけようがありません。サウスポースタンスを有効に使い、懐が深く、質の高いジャブも持っています。距離の掴み方にも優れており、おかげで対戦相手は自分の射程圏内でほとんどパンチが出せないように見えます。無理に飛び込めば右フックか左ストレートのカウンターが待ち受けているのですから、思い切って攻められないのも当然なのでしょう。

 自ら攻めることができ、カウンターもうまい中谷は“コンプリートファイター(完成された選手)”という呼称にふさわしいボクサー。アストロラビオとの試合ではそれほど多くのツールを見せる必要すらなく、格の違いを見せつけたサウスポーがとてつもない選手であることはもう疑いの余地もありません。