中谷潤人の“残酷なボディ”一撃で挑戦者が悶絶「呼吸ができなかった」…戦慄の157秒KOはなぜ起きた? 井上尚弥戦実現へ「もっと大きくなる」

AI要約

WBC世界バンタム級タイトルマッチが7月20日、東京・両国国技館で行われ、中谷潤人が挑戦者を1回KOで下し初防衛に成功。

中谷は柔らかくて強力なパンチを繰り出し、相手を圧倒。

中谷は重心を落とし、強いパンチを打つことに注力し、挑戦者の思惑を上回る活躍を見せた。

中谷潤人の“残酷なボディ”一撃で挑戦者が悶絶「呼吸ができなかった」…戦慄の157秒KOはなぜ起きた? 井上尚弥戦実現へ「もっと大きくなる」

 WBC世界バンタム級タイトルマッチが7月20日、東京・両国国技館で行われ、チャンピオンの中谷潤人(M.T)が挑戦者1位のビンセント・アストロラビオ(フィリピン)に1回2分37秒KO勝ち、初防衛に成功した。ボディ打ち一発で試合を終わらせる圧巻の内容は「中谷強し」を強烈に印象づけた。気鋭のチャンピオンはどのように進化を続けているのか、そして今後どこに向かうのか。将来の展望にまで迫る。

 決して荒々しいパンチではなかった。「スッ」という表現を使いたくなるような、滑らかで、自然な動きから生まれたパンチだった。初回、残り30秒ほど。サウスポースタイルの中谷が右ジャブからつなげた左ストレートが真っ直ぐにアストロラビオのみぞおちあたりに突き刺さる。タイトル奪取に燃えていたフィリピン人の動きがピタリと止まり、次の瞬間、苦しげな表情とともにキャンバスに転がった。

 まさかの展開に場内がざわつく。アストロラビオは辛うじて立ち上がったが、「呼吸ができなかった」。再びひざを折ってうずくまると、レフェリーが「仕方がないね」といった顔つきで両手を頭の上で交差させた。

「柔らかくて感触はなかった」

 試合後、中谷はフィニッシュブローをそう振り返った。穏やかな口調と「柔らかい」という言葉が残酷に響く。「パンチが見えなかった」という挑戦者は顔面へのパンチを防ぐことに集中していた。王者がその裏をかいたのだ。言葉にしてしまえばあまりに簡単な印象だが、そこには両者のさまざまな思惑が隠されていた。

 試合が始まり、まず目についたのが中谷の姿勢だ。いつもより腰を落とし、どっしりとした印象を与える。ただでさえ懐が深いのに、さらに深い。今回、中谷の掲げたテーマが「強いパンチを打つこと」だった。練習ではスパーリングの量を減らし、サンドバッグで強いパンチを打つことにフォーカスした。

「そのためには重心を落とすこと。強いパンチを打とうとすると、どうしても力んでしまうので、肩の力を抜くことがポイント。パンチを“打つ”のではなく“投げていく”イメージです」

 中谷は練習で積み重ねたことを忠実に実行した。それでも試合が始まってすぐには、「長くなりそうだな」と思った。挑戦者の体が計量時に比べてかなり大きくなっていると感じたからだ。これが2度目の世界挑戦となるアストロラビオは19勝(14KO)4敗という戦績が示すように強打とパワーに自信を持つ。「中谷のパンチはそれほど強いと思っていなかった」。試合後のセリフからも、がっちりガードを固めてプレスをかけ続け、中盤以降にパワーでねじ伏せる、という攻略プランだったことが窺える。

 しかし、中谷はチャレンジャーの思惑のはるか上をいった。作戦通り、早い段階で強烈な左をガードの上からたたき込み、「相手がひるんだ。あそこで意識付けができたと思う」。相手により顔面への左を意識させ、「そこの軌道があいていたので(左パンチを)投げ込めた」。ボディ一撃のフィニッシュは、計算通りだった。