水原一平は稀有な存在…実は知られていない、スポーツ通訳の「意外な仕事内容」

AI要約

大谷翔平選手の活躍により、通訳の存在が注目されている。

新たな通訳ウィル・アイアトン氏と共に、大谷選手は好調を維持。

スポーツ通訳の佐々木真理絵さんの苦労や仕事の実態に迫る。

水原一平は稀有な存在…実は知られていない、スポーツ通訳の「意外な仕事内容」

早くも29号本塁打を放つなど今季も好調な大谷翔平選手の活躍によって、通訳の存在が幅広く知れ渡ることになった。

ギャンブルを起因とする銀行詐欺などの罪に問われた元通訳・水原一平氏の突然の逮捕は多くの人を驚かせたが、新たな通訳のウィル・アイアトン氏と共に、大谷選手は新天地でも変わらぬパフォーマンスを発揮している。

ここ近年、さまざまな形で注目を集めたようになった通訳だが、その仕事の実態を知るものはまだまだ少ない。バスケットボールやバレーボールなどの現場で活躍を続けるスポーツ通訳の佐々木真理絵さんに、知られざる仕事ぶりや苦労について語ってもらった。

昨年は女子バスケ日本代表の通訳も務めたという佐々木さんが、スポーツ通訳の魅力に気付かされたのは、彼女が中学生だった2002年のことだったという。

「ちょうど日本でサッカーW杯が開催された時(2002年)に、サッカー日本代表のトルシエ監督を支えるフローラン・ダバディさんの存在を知りまして。ダバディさんの丁寧な言葉遣いや、時折ジェスチャーを交えながらチームと一緒に戦っている姿を見て、通訳という職業に興味を持つようになりました」

その後の佐々木さんはラクロスに励んだ大学生活を経て、一般企業に就職。だが、日々の業務に充実感を感じる一方で、自分の気持ちを熱くさせてくれるスポーツに対する思いは、日に日に強くなっていた。そんな理想と現実の狭間で、情熱を燻らせている時期に頭をよぎったのが、かつて憧れた“スポーツ通訳”だったという。

「どうすればスポーツ選手の通訳になれるのかを必死に調べるようになったんですけど、周囲にはスポーツ業界で働く知人もいなかったので、文字通りゼロからのスタートでした。

しかも、当時の私はTOEICのスコアが820点くらいしかなくて。それなのに満点を取れる人がざらにいるような業界に飛び込もうとしていたんですよ。今思うと世間知らずで、現実が見えていなかったように感じますけど、それでも『何とかしてスポーツの世界に飛び込みたい』という気持ちだけで履歴書を送り続けていました」

佐々木さんの強い思いに触れたbjリーグ(当時、現Bリーグ)の大阪エヴェッサが2014年、佐々木さんをマネージャー兼通訳として迎え入れ、夢に描いたスポーツの道へと足を踏み入れることになったが……。慣れない業界での仕事にはさまざまな困難が立ちはだかったそうだ。

「せっかくチームに入れていただいたにも関わらず、本来ならば身につけていなければならないはずの英語力が身についていませんでしたし、バスケットへの理解も十分ではなかったので、さまざまな壁にぶつかることになりました。その中でも特に困惑したのが、競技中に飛び交う専門用語の通訳です。選手たちと過ごす中で自然と覚えていくものもありましたけど、それでも選手や監督の話している内容がわからずに困惑して、選手のサポートがままならない状況に陥った場面もありました」

その後、同じリーグに所属する京都ハンナリーズ(※)ではマネージャーとして、男子バレーボールのパナソニックパンサーズでは通訳としてアスリートを支え、現在はフリーの通訳としてさまざまなスポーツに携わる佐々木さんは、「競技のことを知らないと仕事にならない場面も多いので、YouTubeで試合動画を見たり、著名な選手やチームの情報はじっくり調べて現場に臨むようにしている」という。

「初めての競技を担当する時は、知っておいた方が良さそうな情報がどんどん目に入ってきてしまうので、今も心のどこかで不安を抱えながら現場に向かっているんです」

一見華やかそうに見える仕事だが、画面に映らない時間の地道な努力がその活躍を支えているようだ。

(※JBLとbjリーグの統合により、2016年秋にBリーグが誕生した)