【陸上】女子800m衝撃の日本新1分59秒93!久保凛が激走振り返る「タイマーを見たら2分を切れそうだったので、最後は気持ちで走った」

AI要約

橿原で行われた関西学連第1回長距離強化記録会で久保凛が日本女子800m初の2分切りを達成し、1分59秒93の日本新記録を樹立しました。

久保は過去の成績から予感される活躍で、高校記録更新を目指していたが、日本記録更新という快挙を達成しました。

これをきっかけにチーム全体のモチベーションも高まり、今後の大会でメダル獲得や記録更新を目指す意気込み満載です。

【陸上】女子800m衝撃の日本新1分59秒93!久保凛が激走振り返る「タイマーを見たら2分を切れそうだったので、最後は気持ちで走った」

日本の歴史と文化の発祥の地でもある橿原で歴史が動いた。日本女子中距離界の新時代突入を告げる衝撃のレースだった。

7月15日に行われた関西学連第1回長距離強化記録会の女子800mで、久保凛(東大阪大敬愛高2大阪)が快走。同種目で日本人女子初の2分切りとなる1分59秒93の日本新記録を樹立した。従来の日本記録は杉森美保が2005年の日本選手権で作った2分00秒45。その記録を0.52秒塗り替え、日本女子中距離界悲願の1分台突入を果たした。

「今回は高校記録(2分02秒57)の更新が第一目標でしたの。高校新は狙っていましたが、まさかここで日本記録を更新できるとは思っていなかったので、正直うれしいです」と、少し戸惑いの表情を見せながらも笑顔が弾けた。

確かに予感はあった。今季は4月の金栗記念、5月の静岡国際、木南記念と日本グランプリシリーズ3連勝を経て、初出場だった6月末の日本選手権で今季3度目のU18日本新となる2分03秒13で初優勝を飾っていた久保。「日本選手権後は、それまでより設定などもワンランク上の練習がしっかり積めていました」と野口雅嗣監督が話す。

その言葉通り、2日前の記録会では4×800mリレーでアンカーを務め、加速付きのラップ(非公式)ながら高校記録を上回る2分01秒台を刻み、8分33秒77の日本新記録樹立に貢献していた。

「リレーの時の1周目の入りが56秒8で、今回それより少し余裕を持って入れば高校記録は出せるから落ち着いていけと先生からも言われていたので、その通りのレースができました」と久保。入りの400mを58秒2で通過する。

「日本選手権の時は1周目が1分かかってしまい、いいリズムで行けませんでしたが、今回は最初からしっかりスピードに乗っていいリズムでいけたことが後半の粘りにもつながりました。突っ込んで入った2日前のレースの経験を生かすことができました」と、勝負の2周目もしっかりとリズムをキープ。ラストの直線に入ってからは、「タイマーを見たら2分が切れそうな感じだったので、最後は気持ちで走り切りました」と快記録につなげた。

200mのスタート地点でラップを取りながらレースを見守った野口監督は、「日本選手権までは、シニア勢とのレースでいろいろなプレッシャーなどもあり、走りが少し硬かったです。そうした中でも勝ち切ることができた経験が自信につながっていると思います。2日前のリレーもそうですが、リラックスしてレースに臨むことができ、のびのびとした彼女本来の走りができたことが大きかったと思います」と快挙を称える。

日本記録を樹立する準備は着々と整っていた。それでも、4×800mリレーのレース後にはかつて男子棒高跳で世界記録を1㎝ずつ何度も更新したセルゲイ・ブブカに例えて「“ブブカ方式”で少しずつタイムを縮めていければ」と話していた野口監督の、予想を上回る成長度で壁を突き破って見せた。

このレースには久保の他にも2日前の4×800mリレーで日本記録を作った北村凛(3年)、朝野流南(2年)、田村実彩(1年)も出場。それぞれ2分05秒69、2分05秒90(高2歴代7位タイ)、2分10秒24の自己新をマーク。小林由依(1年)も2分10秒24の自己ベストを出している。チーム全体での底上げが進むなどチームの雰囲気、ムードの良さも今回の新記録の後押しとなった。

次の目標にインターハイでの連覇、そしてそのインターハイで北村、朝野と3人でメダルの独占を掲げる。チームそろっての今回の快走で、その夢の実現もグッと現実味を帯びてきた。久保は目を輝かせて意気込みを語る。

「まずはインターハイでしっかり連覇を果たし、みんなで表彰台を独占することが目標。選ばれればU20世界選手権でもメダルを狙っていきたい。はじめての世界大会となりますが、今回のタイムでランキングも4番目に上がったので、さらに記録を更新し自信を持って臨めるよう練習を積んでいきたい」

1分59秒93は本人の言葉通り今季のU20世界リスト4位で、U18では世界歴代8位で今季2位の快記録。もちろんU18、U20日本記録(2分02秒23)、高校記録も大幅に塗り替え、一気に名実ともに日本のトップへと昇りつめた。

和歌山県出身。潮岬中から本格的に陸上を始め、全中には2年連続で800mに出場。2年時(21年)はB決勝で3位、3年時(22年)は優勝している。昨年はインターハイ800mで同種目9年ぶりの1年生Vを遂げた。そこから今季、成長の階段を一足飛びに駆け上がっている。

パリ五輪には届かなかったが、来年の東京世界陸上、そして4年後のロサンゼルスと夢は広がるばかりだ。