【緒方耕一】5度の盗塁成功より1度の盗塁死響いたソフトバンク 日本ハム田中正義隙なしクイック

AI要約

日本ハムがソフトバンクに勝利し、5位からの逆襲を果たした。

日本ハムの勝因は、石井と上川畑の活躍と盗塁を巡る攻防だった。

盗塁を決める際の走塁の駆け引きやクイックの重要性が試合結果に影響した。

【緒方耕一】5度の盗塁成功より1度の盗塁死響いたソフトバンク 日本ハム田中正義隙なしクイック

<日本ハム3-2ソフトバンク>◇13日◇エスコンフィールド

 混戦のセ・リーグと違い、パ・リーグはソフトバンクが首位を独走している。そのソフトバンクに大きく負け越している5位の日本ハムが、一矢を報いた。苦手にしているソフトバンクに対し、日本ハムが勝てた理由を探ってみた。

 1番の勝因は、8回裏に同点打を放った石井と勝ち越し打を放った上川畑だろう。しかし、勝負を分けるポイントは、盗塁を巡る攻防だった。

 まず目を覆いたくなったのは、日本ハムの先発バーヘイゲンだった。盗塁を警戒する場面で走力がある選手が塁にいても、クイックのタイムは1秒3台を切れず、平均でも1秒4~1秒5台だった。

 このタイムだとスピードのある選手は楽勝で走れるし、それなりの走力があれば誰でも走れるレベル。俊足の周東はバーヘイゲンから2度の出塁で、いずれも初球に盗塁を決めていた。それほど足が速くない近藤(5盗塁目)と栗原(2盗塁目)も盗塁を成功させていた。これだけクイックが苦手だと、ソフトバンク、楽天といった機動力を使うチームには先発させない方がいいかもしれない。

 ソフトバンクは8回までで5盗塁を決め、チーム盗塁数は59個。パ・リーグトップだった日本ハムの58盗塁を抜いてトップになった。そして1点をリードされた9回表、勝負を分ける盗塁の攻防があった。

 無死一、二塁で、走者は周東(二塁走者)と今宮(一塁走者)で、マウンドは田中だった。打席は栗原だったが、2球目を打ってレフトフライ。この時、田中はクイックで投げていたし、個人的には「とても三盗は狙えない」と思っていた。

 しかし周東は代打・吉田の初球に三盗を狙った。この時の田中のクイックは1秒1で、二盗でもアウトになる確率が高いレベル。しっかりとクイックで投げ、盗塁の隙を与えていなかった。

 この状況はイチかバチかで走る場面ではない。確かに三盗で隙を見せ、二塁走者を警戒しない投手はいるし、クイックをしない投手も多い。しかし前の栗原の打席で田中はクイックをしていた。三盗を狙うなら、ピッチャーのクイックのタイム基準は1秒5前後。1死一、三塁のチャンスを作りたい気持ちは分かるが、無謀なチャレンジになった。

 この時、一塁走者の今宮は二塁に走っていなかった。走れないと思って油断したのかは分からないが、周東が走った時点で二塁に走っていれば得点圏での勝負は続いた。油断したソフトバンクと完璧なクイックで隙を見せなかった田中。その差は大きかった。(日刊スポーツ評論家)