河村勇輝が挑むNBAエグジビット10の過酷さ…「あそこは『チームが勝てばいい』なんて、誰一人思っていない」それでも感じる“無限の可能性”

AI要約

河村勇輝がNBA挑戦への準備を整え、最後の日本代表としての試合で躍動した。

富永啓生との盟友関係も注目され、河村はチームを鼓舞し、アメリカでの戦いに備えている。

新たなパッションを示す河村の変化は、渡邊雄太のような成功をもたらす可能性を秘めている。

河村勇輝が挑むNBAエグジビット10の過酷さ…「あそこは『チームが勝てばいい』なんて、誰一人思っていない」それでも感じる“無限の可能性”

 かねてから海外挑戦を公言してきた河村勇輝が、ついにNBAへ挑戦することになった。

 詳細は後述するが、河村は、かつて渡邊雄太もプレーしたメンフィス・グリズリーズと、エグジビット10契約を結ぶことで合意した。なお、河村と高校時代からしのぎを削ってきた富永啓生も、インディアナ・ペイサーズとエグジビット10契約を結ぶことが内定している。

 その意味で、7月7日の日本代表韓国戦は横浜ビー・コルセアーズの選手として、Bリーグの選手として、最後の舞台だった。高校バスケ界を席巻したときの恩師である福岡第一高校の井手口孝がスタンドから見守るなかで24分13秒にわたりコートを走り回り、17得点を記録した。

 そこで見せた、あるアクションに、河村の信念と覚悟と進化が凝縮されていた。

 第4クォーターの残り7分8秒、盟友・富永啓生の3Pシュートが入ったとき。速いペースでの攻撃だったので、シュートが決まったとき、河村は自陣に戻りかけていた。

 仲間の得点に、河村がほえた。

 自ら得点を決めて自然とガッツポーズが飛び出すことはよくあったが、味方の得点にあそこまで派手に喜ぶ姿はこれまであまり見られなかった。

「リアル桜木花道」の愛称で親しまれ、コート内外でのムードメーカー川真田鉱也はこう話す。

「やはり、2人の関係性もあるんじゃないですか。僕らも富永が決めたら『うぇーい! 』とはなりますけど、富永と河村はほぼ同じ歳くらい(※富永が1学年上)で、高校の時からずっと切磋琢磨してきたわけですから」

 盟友のこの試合初めての3Pに喜びを爆発させた理由を河村はこう振り返った。

「この2試合、(ポイントガードとして)彼を上手く使ってあげることがなかなかできずに、良さを引き出してあげられなかったので。(五輪本番で)フランスやドイツに勝つためには、彼の3Pや爆発が、必ず必要になってくると思うので。そういった意味で、彼には、絶対にこの試合で決めて欲しいなという思いがありました」

 ただ、見落とせないのは富永のシュートに喜んだ後のアクションだった。河村が、スタンドへ向けて両手を下から上にスイングさせて、1万3000人の観客の応援をあおったのだ。

 河村のなかで何かが、変わろうとしている。

 これまではあまり見られないアクションを起こしたのは何故なのか。試合後にそう問うと、河村は明確な意図を明かした。

「ヘッドコーチのトム(・ホーバス)さんから言われていた通り、パッションのところです。自分は元々そういうタイプでは無いですけど、そういった『良いボディランゲージ』でチームを少しでも鼓舞できればいいなと思いました。ファンのみなさんも盛り上がってくれればと思ったので、それも良かったです」

 河村の言う「良いボディランゲージ」は、日本のファンを喜ばせるためだけではなく、アメリカで厳しい戦いを勝ち抜いていくためにも欠かせないものだ。それはまるでNBAで6シーズンにわたってプレーしてきた渡邊のようなアクションだった――。