【【川崎】痛恨の引き分け、磐田戦のピッチで起きていたこと(1)】大島僚太を先発起用した戦術的な狙いとは……磐田が強力2トップを生かす戦い方の中で

AI要約

川崎フロンターレがJ1リーグ第22節で磐田戦と同様に引き分けた後、選手や監督が試合を振り返って難しさを感じている。

磐田戦で大島僚太を先発起用したが、その起用には特定の戦術的意図があったようで、その選択は試合展開に影響を与えた可能性がある。

鬼木監督が試合後に勝点3を取れなかったことがすべてだと語り、チームの苦境を訴えた。

【【川崎】痛恨の引き分け、磐田戦のピッチで起きていたこと(1)】大島僚太を先発起用した戦術的な狙いとは……磐田が強力2トップを生かす戦い方の中で

「これもサッカーなのかなっていうか……。難しさを感じてます」

 百戦錬磨の小林悠も、こう試合を振り返るしかなかった。7月6日に行われたJ1リーグ第22節後の、ヤマハスタジアムのミックスゾーン。川崎フロンターレにとっては直近の3試合と結果こそ同じだったが、ジュビロ磐田戦後は、それとは違う空気があった。

 ある選手に試合の受け止めを聞くと、16秒の間が生まれた場面もあった。その間に、さまざまな考えが頭をよぎったはずだ。この展開をどう消化していいか、試合終了からわずか20分程度ではあまりに難しかった。

 この日の川崎は、アウェイで先制されながらも逆転し、2-1と勝利も目前となった後半アディショナルタイムに痛恨の同点弾を許す。GKチョン・ソンリョンがボール処理時に足を引っかけてしまうアクシデントで、相手に2度目のゴールを許してしまった。その結果、連続引き分け数は3から4に、連続未勝利数は4から5に。失意の中、敵地を去ることとなった。

「勝点3を取れなかったことがすべて」

 試合後にこう語った鬼木達監督の表情は、とても険しかった。

 鬼木監督は磐田戦で大島僚太を先発起用した。このチームの背番号10は昨年序盤に負傷し、その後、長いリハビリが続いた。復帰戦は6月26日の湘南ベルマーレ戦で、10分間の出場で“リスタート”を切った。次戦のサンフレッチェ広島戦(6月29日)では8分間の出場で、中2日の連戦を経験。そして3試合目となるこの磐田戦でスターティングメンバーへと戻ってきた。

 しかし、その起用は鬼木達監督が「半分か、60分程度」と想定するものだったという。交代カードを事前に“確約”することで戦術的に制限を受ける可能性もあるが、ではなぜ時間での条件付きでもピッチに送り出したのか。

 それを推測する元が、ジュビロ磐田の戦い方だ。夏場ということもあり、そして、“武器”を最大限生かすためにも、磐田は前線に君臨するジャーメイン良とマテウス・ペイショットの2人の守備面でのハードさを軽減させ、攻撃時に体力を残すようにしていたという。それもあって、磐田はこの川崎戦で

「CBには持たせていい」と割り切っていたという。松本昌也は、「アンカーやボランチの選手にボールを入れて起点を作られるよりも、CBで回させるっていう意識」と振り返る。

 そうした磐田の出方を考えたからこそ鬼木達監督は、窮屈になるであろうボランチの部分でしっかりとボールをキープして展開できる選手を置きたかったのではないか。試合後に「自分たちでボールを動かしながら焦れずにやろう」とも話した指揮官の言葉は、気持ちの通りだったはずだ。

 実際、そのために準備してきたと思われる部分もある。この試合に向けた立ち上げの練習日に、暑さの中で繰り返しのミニゲームを行った。同じメンバーではなく、何度も選手を入れ替えた。その際、大島僚太を組み込むだけでなく、ボールを保持しようという狙いが見える組み合わせが何度も見られた。

 磐田戦の先発構成は、「ケントはずっといいパフォーマンスをしていました」と鬼木監督が橘田健人のここ数試合の動きを評価している中で、戦術的な意図があったように思われる。

(取材・文/中地拓也)

(後編へ続く)