「むちゃくちゃやらないと…」広島新井監督の計算ずく“超ド級”積極野球が岡田阪神を混乱させる…初球エンドランが4度に代走の羽月が二盗→三盗→暴投で勝ち越し点

首位の広島が4日、マツダスタジアムで行われた阪神戦に7－5で勝利して連敗を3でストップ、3位に転落した阪神とのゲーム差を3に広げた。試合後に新井貴浩監督（47）が「むちゃくちゃやらないといけないと思った」と振り返ったように、打順を大幅にシャッフルし初球エンドランを計4度も仕掛けて阪神のバッテリーを混乱させ8回には代走の羽月隆太郎（24）が二盗、三盗と決めて暴投で勝ち越しホームを陥れた。

　新井監督が勝負手を打った。

　3－3で迎えた8回。先頭の3番小園が、この回から代わった島本からライト前ヒットで出塁すると、代走羽月を送った。

「小園が出たら勝負をかけて代走羽月と決めていた」という。

　ここまで6盗塁をマークしていた足のスペシャリスト羽月も“走る気”満々だった。

「昨日と一昨日と悔しい負け方しているんで何とか“事”を起こして勝ちたいなと思っていきました」

　もちろん阪神バッテリーは盗塁を警戒していた。

　初球を投じる前に3球続けて牽制球。羽月は動けず、坂倉はポーンと内野フライを打ち上げた。島本は続く野間を打席に迎え、ここでもまず1球一塁へ牽制していた。だが、その初球に仕掛けてきた。

　岡田監督はリクエストを要求したが判定は覆らなかった。

　島本は3－0とカウントが悪くなったため、もう無理をせず野間を四球で歩かせ、阪神ベンチは石原の打席で防御率1.13の石井を投入した。

　代わり端の隙をつき広島はさらに揺さぶってきた。その初球になんと石井のナックルカーブを読んでいたかのように羽月が三塁盗塁を成功させたのだ。

「チャンスがあったら行こうかなと思ってたんですけど、体が勝手に動いたって感じです」

　羽月が、そう振り返ると、新井監督はこう絶賛した。

「サインというより、彼には任せていますので。彼がこちらの期待に100％応えてくれた。素晴らしい走塁だったと思う」

　走者に「いつ走ってもいい」と判断を任せるグリーンライトのサインで羽月が勇気をもってスタートを切ったのだ。

　石井は目では牽制はしていた。だが、牽制球は投げなかった。

　スポーツ各紙の報道によると、岡田監督は「初球あれだけやられているのに、けん制もせえへんもん」と、バッテリーが無警戒だったことに“おかんむり”だったという。岡田監督の「初球」と言った言葉の裏は、後から詳しく説明するが、初回に無死一塁からエンドランを仕掛けられ、秋山に結果的に盗塁を決められたのも初球だった。　

　さらに石原の打席で二遊間がノーマークだったため、一塁走者の野間も盗塁を決め、ボール3となったこともあり、阪神は石原を歩かせ塁を埋めにきた。菊池は三振で二死となってからの堂林の初球だった。石井が投じた縦のスライダーがワンバウンドとなり、ブロッキングにいった梅野が、それを弾いた。羽月は迷わずホームを狙い執念のヘッド。梅野が転がりながらホームへ投げたが送球は大きくそれた。

「彼の性格もとにかく前へ前へ。迷いがなかった。少しでも迷いがあればホームに還れてなかった。勇気ある走塁だった」

　思わぬ勝ち越し点に新井監督はベンチで大はしゃぎ。梅野が弾いた瞬間にシャッフルから最高の一歩を切っていた羽月も「（石井は）いいピッチャーなんで、そんな簡単には打てないし、低めに投げてくるのが分かっていたので準備していた」と暴投を予期していたことを明かした。

　実は、その前の菊池の打席では、フォーク、スライダーのワンバウンドが、最後の三振になったボールも含めて3球もあった。羽月がそれを脳裏にインプット。綿密に準備された本塁突入だった。