【陸上】メダル狙える!村竹ラシッド今季世界6位タイの好記録で五輪切符獲得「12秒台出せれば」

AI要約

村竹ラシッド(22=JAL)がパリ五輪代表に内定し、男子110メートル障害で初優勝を果たした。

過去の失敗から学び、自信を取り戻した村竹は、五輪に向けて真剣に取り組んできた。

パリ五輪への出場を確実にした村竹は、12秒台の記録更新を目指し、自身の挑戦を続ける。

【陸上】メダル狙える!村竹ラシッド今季世界6位タイの好記録で五輪切符獲得「12秒台出せれば」

<陸上:日本選手権>◇6月30日◇第4日◇新潟・デンカビッグスワンスタジアム◇男子110メートル障害決勝

 村竹ラシッド(22=JAL)がパリ五輪代表に内定した。今季世界6位タイの13秒07(追い風0・2メートル)で初優勝し、自身6度目の参加標準記録(13秒27)突破。優勝すれば内定となる日本陸連の選考基準を満たした。自身が保持する日本記録13秒04は、23年世界選手権銀メダル相当の好タイム。パリ内定済みで同じく日本記録保持者の泉谷駿介とともに、五輪では日本勢初の決勝進出とメダル獲得が懸かる。

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 「絶対にパリへ出てやる」。スタートラインに立った村竹は、心の中でつぶやいた。3年前の日本選手権決勝ではフライングで失格となったが「不安はない」と自信があった。ピストル音が鳴り、一直線に走りだす。中盤からぐんぐん後続を引き離し、あっという間に10台のハードルを越えていった。今季世界6位タイの好記録でパリ切符を獲得。しばらく時間がたち、ほほ笑んだ。「やっとスタートラインに立てた」。

 あの失格が人生を変えた。順大2年時の21年東京五輪イヤー。6月に参加標準記録を突破した村竹は、1カ月後の日本選手権で3位までに入れば、五輪切符が手に入る状況だった。迎えた決勝。その大一番で人生初のフライングをおかした。茫然とした。五輪への道は、走ることなく閉ざされた。「今でも覚えてますよ」。なぜ失格したのか-。自らに問いかけ、1つの結論にたどり着いた。

 「当時は自分が五輪に出ていいのかな? とずっと感じていました」

 それまで五輪は「テレビで見るもの」と思っていた。ただ、いざ参加標準を突破すると、地に足がつかなくなった。毎日「俺って五輪に出れるの?」と心が揺れ動いた。陸上に人生を懸けているのか-。それまでの日々を振り返ると、堂々とうなずけなかった。

 小学生の頃から陸上を始め、千葉・松戸国際高3年時には全国高校総体110メートル障害を制したが、当時は練習の苦しさから「やめたい」と思ってばかりだった。順大進学後も「社会人で競技をするなんて考えられない」と将来を思い描けなかった。フライングが起きたのはちょうどその頃。「もっと真剣だったら五輪に立てたかもしれない」。心に火がついた。体づくりから見直し、筋力トレーニングに注力。22年に80キロの負荷だったクリーンは、今春に110キロへとアップ。「動きは本当に正しいのか」と、ハードル間の足の刻みも素早くした。今は「人生をかけて取り組んでいること。人生そのもの」と胸を張れるようになった。

 あの失格から3年。この日は文句なしに、五輪切符をつかんだ。ただ、フィニッシュ後はあえて喜びを表現せず。「ここがゴールじゃなくて、ここからがスタート。本番はここではない」と言い切った。「12秒台をパリで出せれば」。日本人初の快挙へ。人生をかけて、パリへ乗り込む。【藤塚大輔】