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LAの晴天に苦戦を覚悟、渋滞を恐れて交渉場所をヤンキー・スタジアムからマンハッタンへ――山本由伸とヤンキースの“交渉秘話”<SLUGGER>
山本由伸がヤンキース戦で快投を見せ、メディアから絶賛される
ヤンキースは山本獲得に苦戦し、山本は最終的にドジャース入り
キャッシュマンGMの心中が察するに余りある事態が発生
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ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMは今日の試合を見何を思っただろうか。
6月7日(現地)、ヤンキー・スタジアムでのヤンキース戦に登板した山本由伸(ドジャース)は7回2安打無失点の快投を披露。勝ち星こそつかなかったものの、アーロン・ジャッジを擁する強力ヤンキース打線を手玉に取り、全米のメディアから「今季最高の投球」と絶賛された。
昨オフ、投手では史上最長の12年3億2500万ドルでドジャース入りした山本をめぐっては、ヤンキースも最後まで争奪戦に参加していた。
昨年9月にはキャッシュマンGM直々に来日して山本の投球を視察。山本が自身2度目のノーヒットノーランを達成した日(9月9日のロッテ戦)も、キャッシュマンGMはネット裏最前列で目撃している。
オフになり、山本がポスティングでのMLB移籍を発表すると、ヤンキースも争奪戦に参加した。だが、ドジャースが当初から最有力候補に挙げられていた中、キャッシュマンGMはじめヤンキース首脳は最初から苦戦を予感していたようだ。
12月初旬、ヤンキースはLAで山本と初めて交渉した。場所はビバリーヒルズの高級ホテルの屋上レストラン。『ジ・アスレティック』によると、オーナーのハル・スタインブレナー、アーロン・ブーン監督、マット・ブレイク投手コーチらと交渉に臨んだキャッシュマンGMは、雲一つなく晴れ渡ったカリフォルニアの青空を見てこう思ったという。
「これだ。この天気と我々は競い合わなきゃいけない」
ブレイク投手コーチも同じ考えだったようだ。「彼がここに長く滞在すればするほど、うちは不利になる。つまりこういうことさ。誰がここを離れたいと思う?」
それから1週間後、ヤンキースは、今度はニューヨークで山本と2度目の交渉の席に着いた。場所はマンハッタンの高級ホテルのスイート。ヤンキー・スタジアムを選ばなかった理由は、交通渋滞を恐れたためだった。
ワールドシリーズ優勝27回を誇るMLB最強の名門球団がこれほどの涙ぐましいほどの配慮を重ねたにもかかわらず、山本は当初の予想通りドジャースに入団。そして今日、ヤンキースとの初対決で球界最強打線を相手に快投を演じたのだから、キャッシュマンGMの心中は察するに余りある。
今季、山本とヤンキースが再戦するとすれば、ワールドシリーズしかない。キャッシュマンGMが雪辱を果たす機会は訪れるだろうか。
構成●SLUGGER編集部