人を恐れぬ「アーバンモンキー」被害相次ぐ 厚かましく賢い…住宅街で子どもも襲われ負傷

AI要約

福岡都市圏では野生のサルによる人的被害が相次ぎ、都市型のサル「アーバンモンキー」と呼ばれる厚かましく賢いタイプが特定されている。

那珂川市では12件の被害が報告され、特に片縄地区での被害が多い。市街地に出没し、人を襲う行動が増えており、対策が急がれている。

市は捜索活動で2匹の加害サルを特定し、今後は対策強化と広域調査を進める予定である。

人を恐れぬ「アーバンモンキー」被害相次ぐ 厚かましく賢い…住宅街で子どもも襲われ負傷

 福岡都市圏では昨年夏以降、野生のサルに人が襲われる被害が相次いでいる。人間を恐れないタイプとみられ、厚かましく賢い上、都市部に適応した特徴から、捕獲の専門業者は「アーバンモンキー(都市型のサル)」と呼ぶ。福岡県那珂川市では“加害者”とみられる2匹を特定したものの、捕獲には至っていない。人的被害の防止に向け、自治体を超えた早急な対策が求められている。

 那珂川市によると、2023年9月から今年1月までに、かまれたり引っかかれたりした人的被害は計12件(被害者15人)。この間、100件以上の目撃情報が寄せられたという。

 最多の6件の被害が発生したのは同市片縄地区。福岡市南区と隣接し、通行量の多いバス路線もある住宅街で、片縄山(292メートル)や油山(597メートル)につながる山裾が西部に広がる。民家の窓から侵入したサルが5歳児のお尻をかみ、逃走したケースもあった。

 これまでも、那珂川市南部の中山間地では出没情報はあった。仏壇からお供え物のバナナが消え、「サルが祖母を参ってくれた」との笑い話も残り、被害は庭の柿が食べ尽くされるなどの農産物が中心だった。「サルは人間に危害を加えない」という定説があった。

 それが、昨年9月以降に急変。市街地に単独で出没し、人をめがけてくる。運動会の練習をしていた小学校にも現れ、子どもらにけがをさせた。同市出身の市担当者は「こんなに市街地に出没し、人を襲うことなんてなかった。完全に人に慣れてしまったのだろう」と頭を抱えている。

 市側も手をこまねいていたわけではない。昨年10月中旬に専門業者にサルの捕獲を委託。エサを置いておびき寄せ、わなを仕掛けたり、監視カメラを設置したり、目撃情報の多いエリアを終日捜索したりした。追い詰めたこともあったが、捕獲できなかった。

 その捜索活動で、雌雄の2匹を「加害サル」に特定することはできた。通称、雄の「赤股」と雌の「白眉」。市は2匹は人間だけでなく、民家や道路などの生活圏も怖がらなくなったと分析している。2匹の関係性は分かっていない。

 市は今後、広域的な生息状況、市街地に出没する原因などの調査のほか、見回りや追い払い態勢の構築、捕獲業務の財源確保を県に求めていく考えだ。

 市議会も昨年末、「サル被害防止対策への支援に関する意見書」を全会一致で可決。「サルの生息地は広範囲に及ぶ。各自治体の対策には限界があり、県主導の広範な対策を求める」と県に訴えている。(上野洋光)