太陽系外惑星「K2-18b」の “生命の観測的証拠” は(今のところ)幻かもしれない

AI要約

太陽系外惑星の1つであるK2-18bについて、大気組成の観測結果から生命活動と関連があるジメチルスルフィドが検出されたという主張と、それを否定する研究結果が存在する。

生命活動に関連して放出される化学分子を見つけることは、生命探索の重要な手掛かりであり、バイオマーカーと呼ばれるこれらの分子は生命活動によって大量に生成される。

K2-18bの大気組成についての観測結果は予備的なものであり、ジメチルスルフィドの存在を示す信号は弱い可能性がある。

太陽系外惑星「K2-18b」の “生命の観測的証拠” は(今のところ)幻かもしれない

太陽以外の恒星の周りを公転する「太陽系外惑星」の中には、地球のように適度な温度と豊富な液体の水を持つかもしれない惑星がいくつか見つかっています。その1つである「K2-18b」について2023年9月に発表されたある研究では、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」による大気組成の観測の結果、豊富なメタンと二酸化炭素に加えて、生命活動と関連があるバイオマーカーとして注目されている「ジメチルスルフィド」が見つかったと主張されていました。

しかし、カリフォルニア大学リバーサイド校のShang-Min Tsai氏などの研究チームは、この主張に否定的な研究結果を発表しました。K2-18bのような大気をコンピューターでモデル化し、熱や光によって生じる化学反応を再現したところ、この観測データをもとにジメチルスルフィドを検出できたという先の研究結果は怪しいことが示されたというのです。ただし今後、ウェッブ宇宙望遠鏡によるK2-18bの追加観測が予定されているため、今後の観測でジメチルスルフィドが検出される可能性は残されています。

観測技術の進歩によって、天文学者は地球と似た環境を持つと推定される「太陽系外惑星」をいくつも見つけています。地球と似た環境があれば、そこに独自の生命体がいるかもしれないと考えるのは自然なことです。しかし、仮に独自の生命体がいるとして、その証拠はどのように見つければいいのでしょうか?

生命活動に関連して放出される化学分子を見つけることは、生命探索の大きな手がかりの1つとなります。バイオマーカーと呼ばれるこれらの分子は、生命活動によって大量に生成されることを特徴としています。分子の種類によっては、生命活動にともなって生成される量の方がその他の要因によって生成される量を上回ることもあります。

地球から約120光年離れた位置にある惑星「K2-18b」は、「ジメチルスルフィド」と呼ばれる硫黄化合物の発見が報告されたことで注目されています。ジメチルスルフィドは、生命と関係のない自然界の化学反応でも生成されますが、地球では特に植物プランクトンの活動によって大量に生成されることが知られている、代表的なバイオマーカーです。

2023年9月、ウェッブ宇宙望遠鏡による観測結果を元にK2-18bの大気組成を調べた研究成果が発表されると、大きな注目を集めました。バイオマーカーの1つであるジメチルスルフィドの発見に加えて、二酸化炭素とメタンは豊富に見つかった一方でアンモニアが見つからなかったと主張されたことがその理由です。この組み合わせは、1%の水素を含む温暖な気候の大気と、その下に液体の水で構成された海が存在する環境で得られると考えられています。

ただし、最も興味深い分子であるジメチルスルフィドについては、その存在を示す信号が弱いため、この結果を発表した研究者自身も予備的な結果であると認めていました。