泌尿器科医が骨折の対応? 夜間にバイク事故で大けがをして救急搬送された男子大学生がラッキーだったワケ

AI要約

19歳の男子大学生がバイク事故で脚を負傷し、夜間救急外来で受け入れられることになる。技師の到着までの緊急対応や診察の過程、手術の成功などが描かれる。

医師の不足や医療資源の限られた状況が深刻化しており、医師の働き方改革が行われつつある。しかし、偏りがあるため全体的な医師数だけでは不足が解消されない可能性がある。

読者に事故を防ぐ意識を持つよう呼びかけ、病院受診を減らすことの重要性を訴える。

 病気やケガの治療で入院している患者さんは、何を思い、感じているのでしょうか。看護師の後閑愛実さんが、病棟で起こる様々なドラマや患者さんと向き合う中で感じたことを紹介します。

 病院で当直勤務をしていた深夜に、救急隊から患者さんの受け入れ要請の電話が入りました。バイクの転倒事故で、19歳の男子大学生。脚を負傷し、歩けないというのです。看護師は、その日、夜間救急外来の担当だった私しかいませんでしたが、当直の医師とも相談し、患者さんを受け入れることにしました。

 連絡を受けて、骨折しているかもしれないと考え、自宅待機の診療放射線技師に来てもらうことにしました。3次救急のような大きな病院では、夜間に技師が常駐していることもありますが、2次救急では、そういうわけにはいきません。

 すぐに連絡をしましたが、それでも到着するまでに30分以上はかかります。救急車が到着してからも、しばらくエックス線を撮るまで待つことになりました。

 男子大学生は、左側の太ももが、右側の1.5倍くらいに腫れ上がり、あちこち擦り傷もあって出血しています。

 とりあえず出血部分を洗浄してガーゼで保護し、技師が到着するのを待ちました。

 「いてーよー! 早くなんとかしてよー!」

 大学生は大きな声で叫んでいました。

 「全くついてないよ。相手が悪いんだよ。俺は巻き込まれたの」。事故相手の運転手の悪口をいう元気はありました。

 ようやく、エックス線撮影をして診察を行った結果、大腿(だいたい)骨の骨折で入院となりました。

 あの大学生は本当に運が良かった。たまたま整形外科医が当直だったので、適切な処置ができ、翌日、早々に手術を受けることができました。

 夜間に専門医に診てもらえることはあまりありません。泌尿器科医が骨折した患者さんの対応にあたったり、呼吸器内科医が脳の病気を診たりすることは日常茶飯事です。しかも、ほかの患者さんも同時に診ているので、病院に到着してもすぐに診察を受けられるとは限りません。

 医療現場からは常に、「医師が足りない」という声が上がっています。こうした中、4月からは「医師の働き方改革」が始まりました。長時間勤務が常態化している勤務医の残業時間を規制するというものです。

 これにより、医師の労働時間は短くなることも期待されますが、一方で、「医師不足」の状況が深刻になるケースがあるかもしれません。全体的な医師数は十分であっても、診療科や地域によって偏りが生じているためです。

 医療資源は限られているということを皆さんにも知ってほしいです。事故を起こさないように心がけていただくだけでも、病院を受診する機会を減らすことにつながると思っています。

(本ものがたりは、実際の患者さんのエピソードを基に構成しています。プライバシーに配慮し、個人が特定されないように一部変更しています)