じつは、数学にとどまらなかった…ガロアが「筋金入りの数学嫌い」に起こした「衝撃の革命」

AI要約

ブルーバックスは科学をポケットに届けるシリーズであり、数学を避けてきた編集部メンバーが新たな挑戦に臨む記事。

数学に苦手意識を持つ編集者が、ガロア理論を理解するための取り組みや金重明さんの提案について述べられている。

数式の少ない説明で、文系人間にもわかりやすく数学について解説する企画に挑む編集者の様子が描かれている。

じつは、数学にとどまらなかった…ガロアが「筋金入りの数学嫌い」に起こした「衝撃の革命」

1963年に創刊されて以来、「科学をあなたのポケットに」を合言葉に、これまで2000冊以上のラインナップを世に送り出してきたブルーバックス。本連載では、そんなブルーバックスをつくっている編集部メンバーによるコラムをお届けします。その名も「ブルーバックス通信」。どうぞお楽しみください!

ド文系にもかかわらず、ブルーバックスをつくり続けて20年近く。物理、地学、生命科学……思えばずいぶん知ったかぶりをしてきました。でも1つだけ、できるかぎり避けて通ってきた分野が「数学」です。こればっかりは本当に違う言語みたいで、「なんちゃって理系」には知ったかぶりのしようがありません。ちなみに高校1年のときlogで挫折して以降、数学の授業で何を学んだのか、記憶にございません。

唯一の例外として、本業が歴史作家である金重明さんには、数学の話も大河ドラマのような大きな物語にのせてくれるのが面白く、これまで数冊お願いしました。

とはいえ肝心の数学の解説はやはり自分には難しく、質問して答えをいただいてもやっぱりわからず、でもあまり低レベルな質問ばかりすると怒られたりもするので(一度、「なぜここでxを微分するのですか」と尋ねたところ、「数学ではわからないものがあればとりあえず微分するのは当たり前ではないか」と、本の中で編集者に抗議されたことも。まあ一種のプレイなんでしょうが・笑)、白状すれば、「自分にはわからなくても、数学好きの読者ならきっとわかってくれるさ」と、理解することをあきらめるのが常道となっていたのです。

そんなダメ担当者に、金さんはすごい企画を提案してきました。ガロア理論を数学が嫌いな文系人間にもわかるように、数式は極力少なくして、タテガキで書きたいというのです。

がろありろん。

やたら難解だという噂と、ガロアの顔くらいは知っていても、どんな理論かは1ミクロンも存じません。でも17歳のときに書いた論文が後世にまで絶大な影響を及ぼしているなんて、そんな人類、ほかにいただろうかと考えると、もし自分にもわかるならぜひ読みたいと思えてきました。

でもそれって、将棋のルールしか知らない初心者に、藤井聡太がなぜ強いのかを説明するようなものでは? そんなの無理でしょ、と言うもう一人の自分もいましたが、ここはお願いする一手でしょう。

やがて、原稿が届きます。いつもなら「夏をあきらめて」を口ずさみながら読み飛ばすところですが、今回は、ここからが勝負です。本当に自分にもわかるのか。自分を使った人体実験に臨む心境で読みはじめて、青ざめました。まえがきにこんなことが書かれていたからです。