化石から判明した、あるジュゴンの悲劇すぎる死

AI要約

中期中新世のジュゴンが化石として発見され、ワニ類とサメに2度も襲われたことが判明。

ジュゴンの死因や捕食者について詳細な研究が進められ、攻撃の跡から獲物の状況が推測される。

化石記録から、昔の食物網の構造や動物たちの生態に関する重要な知見が得られるが、限界もある。

化石から判明した、あるジュゴンの悲劇すぎる死

弱肉強食の世界、いつの時代も同じです。

中期中新世のジュゴンが何百万年もの間、化石となって保存されていました。調べてみると、このジュゴン、かわいそうなことに2度も殺されていたのです。正確には殺されたというより、攻撃を受けた、かもしれません。

現在のベネズエラで発見されたこのジュゴンの遺骸には、2種類の異なる捕食者に捕食された形跡が見つかりました。サメとワニ類です。

まさに泣きっ面に蜂で、ジュゴンにとってはかわいそうな最期だったようですが、この発見は2300万年前から1160万年前までの時代の食物網の構造について新たな情報をもたらしてくれたのも確かでした。

2019年にベネズエラ北西部のアグア・クララ層(かつては海底だった場所)で発見された頭蓋骨の一部と18個の脊椎骨は、現在ウルマコ古生物学博物館に保管されています。チューリッヒ大学の古生物学者グループがこの化石を調べたところ、大きく保存状態のよい噛み跡をいくつか発見。

さらに詳しく観察すると、噛み跡の形、深さ、攻撃者の歯が骨を切り裂いた角度によって、3つのグループに分類できることがわかりました。Journal of Vertebrate Paleontology誌に掲載された論文では、噛み跡の一部が浅く丸い形状のもの、幅広く湾曲しているもの、そして3つ目は三角形の横断面を持つ細長い切れ込みだったと記されています。

最初の2つはどちらもワニ類の噛み跡と一致しており、切り裂くような動きの痕跡があることから、爬虫類が獲物を殺して解体する際に激しくねじる動作「デスロール」をしたことが推測されます。

そして最後の噛み跡はまったく異なっていて、研究グループはこれがガレオケルド・アダンクスというイタチザメの古代の親戚によるものと結論付けています。

違う2匹の敵にやられてしまったジュゴンですが、ちょっとだけ気が楽になる事実も。実はこの噛み跡、同時に付けられたわけではないようです。

研究グループは、最もありうるシナリオとしてはおそらく、まずワニ類が致命的な攻撃を行ない、その後サメがジュゴンの死体を食べに現れたと結論付けています。

「とはいえ、標本が断片的な性質であるため、他のシナリオの可能性も排除できません」としています。研究では、このような噛み跡から動物が互いをどのように捕食していたかという知識を得ることができるけれど、化石記録には限界があり、包括的な結論を導き出すのは難しい場合があると指摘しています。そのため、このジュゴンの標本のようなサンプルは、先史時代の記録の点と点を結ぶ上で非常に貴重なものとなります。