これからの日本の医療に、総合診療医とホスピタリストが必要な理由

AI要約

日本の医療制度において、総合診療と総合内科の違いや特徴について解説されています。総合診療は様々な診療科をカバーする幅広い医療を指し、総合内科は内科に限定される総合診療であることが説明されています。

総合診療は予防医療から緩和ケアまで幅広い医療を含み、様々な環境で活躍する医師が含まれる一方、総合内科は内科に限定される医療を行うホスピタリストも存在すると述べられています。

総合診療と総合内科のそれぞれがどのような医療を提供するか、どのような医師が活躍するかが具体的に紹介されています。

これからの日本の医療に、総合診療医とホスピタリストが必要な理由

日本の医療制度では、標準的かつ適切な医療を提供できる“専門医”が内科や外科といった各診療科ごとに設定されています。そんななか2018年に始まった「新専門医制度」では19番目の基本領域として総合診療が新たに追加され、2021年には総合診療専門医の第一期生が誕生しました。

しかし、総合診療は19ある基本領域で唯一標榜することが許されていない診療科であり、総合診療がどのような医療なのかを一般の方が知る機会が少ない現状があります。さらに、同じく新専門医制度で登場した「総合内科」と総合診療との違いについては、医療従事者の間でも見解が異なるため、一般の方が理解することは容易ではありません。

そのような現状で、総合診療とは何か、総合内科と何が異なるのか、それぞれの診療科が患者や病院にもたらすメリットは何かを、アメリカの病院で総合内科医(ホスピタリスト)として働いた経験があり、現在は東京にある板橋中央総合病院の院長として総合診療を実践している加藤 良太朗先生に伺いました。

総合診療というと、「プライマリ・ケア」を連想する人もいるでしょう。これは、予防医療や初療を行う、幅広い「入り口」の医療を指しますが、総合診療はこれだけではありません。また、総合診療というと、「家庭医療」を連想する人もいるでしょう。これは主に診療所やクリニックなどで、お子さんから大人まで家族みんなを診る、患者さんの年齢層も幅広い医療を指しますが、総合診療はこれだけでもありません。

日本における総合診療という概念は非常に幅広く、内科も外科も精神科も産科も含まれ、予防医療から緩和ケアまで、あらゆる場面での医療を含みます。つまり、総合診療を行う医師が、どのような医療に携わっているかによって、その名称も仕事内容も変わってくる、というのが私の考えです。

病院の救急外来で活躍しているのも「救急医」という総合診療医なら、クリニックにおいてプライマリ・ケアを提供する「かかりつけ医」も、あるいは在宅診療において人生の最終段階における医療(終末期医療)*を行う「在宅医」も総合診療医です。もちろん、日本専門医機構から総合診療専門医の資格を取得した医師が「総合診療医」だ、ということもできると思います。

一方、総合内科も総合診療と同様、非常に幅広い医療を指しますが、総合内科は名前のとおり、あくまで内科に限定されます。つまり、総合内科は内科に限定した総合診療ということもできます。最近では、外来診療などを行わず、もっぱら病棟で入院患者の対応のみにあたる総合内科医も出てきました。このような医師を「ホスピタリスト」と呼びます。

*2015年3月に厚生労働省検討会において終末期医療から名称変更