『百年の孤独』が話題沸騰中…!呪われた一族と科学の「意外な関係」

AI要約

「百年の孤独」の文庫化が話題となり、なぜ今注目されているのかが明らかになっている。

作品の魅力や不思議な歴史、作者の巧みな筆致などが読者を引き込んでいる。

物語の舞台設定や主要キャラクターの変遷など、熱狂の理由が紐解かれる。

『百年の孤独』が話題沸騰中…!呪われた一族と科学の「意外な関係」

1963年に創刊されて以来、「科学をあなたのポケットに」を合言葉に、これまで2000冊以上のラインナップを世に送り出してきたブルーバックス。本連載では、そんなブルーバックスをつくっている編集部メンバーによるコラムをお届けします。その名も「ブルーバックス通信」。どうぞお楽しみください!

『百年の孤独』(新潮文庫)が話題である。SNSや書店で見かけない日はないし、友人や親戚と会うと「買った?もう読んだ?」という話になる。まるで書き下ろし超大作のような盛り上がりだ。実際に、文庫版の発売前からAmazon総合1位、事前重版、発売即重版……と、公式情報だけでとんでもなく売れていることがわかる。

なぜ今、こんなにも注目されているのか。あらためて書誌情報を調べてみる。ガルシア・マルケスによる『百年の孤独』は、“Cien Años de Soledad”という原題でアルゼンチンのスダメリカナ社から1967年に刊行された文芸作品だ。それから半世紀余りで世界46言語に翻訳され、累計発行部数はなんと5000万部を超えているという。ご、ごせんまん……。もはや殿堂入りクラスの超特大ベストセラーといっていいだろう。

日本語版は1972年に出版されて以来、版を重ねて長く親しまれてきたが、なぜか文庫化は決してなされなかった。世界文学ランキングの首位に選ばれることもある「名作中の名作」であるがゆえに不思議がる声も多く、「何か事情があるに違いない」という考察が読書家のあいだで過熱、やがて「文庫化されたら世界が滅ぶのでは……」と噂されるほどのミステリアスな存在になっていった。それがついに文庫化されるということで、「五十年の待望」が爆発し、これだけの話題を呼んだということらしい。

熱狂の声につられて、文庫版を買ってみた。読みはじめると、たしかに面白い。不思議な村「マコンド」の開祖であるブエンディア一族のたどった数奇な運命を描いたもので、驚異的な挿話に満ちたテンポのよさが魅力的だ。南米で生まれた作品だけあって、うだるような外の暑さのなか、部屋でビールを飲みながら読むのにもぴったりである。

冒頭部分を紹介してみたい。マコンドの村をジプシーのメルキアデスが訪れるシーンから物語は始まる。メルキアデスが、できたばかりの村に磁石や望遠鏡といったふしぎな品物を次々と持ち込むと、族長ホセ・アルカディオ・ブエンディアはすっかり夢中になってしまう。彼の目には、磁石は「魔法の鉄の棒」、巨大なレンズは「太陽戦争時代の新兵器」に映る。

科学とほとんど無縁に暮らしていたホセだが、それらの発明品に入れ込むうちに、性格も変貌していく。科学の沼にどっぷりとハマるにつれて、村のために率先して働いてきた勤勉さは「磁石熱や天文学上の計算、物質変成の夢やさまざまな世界の不思議を見たいという願望などに引きまわされて、あっさり消え」(21ページ)、「ぐうたらな身なりをかまわない人間に変わった」(22ページ)。

なんという罪づくりな! 科学との遭遇をまるで合図のようにして、呪われたブエンディア家は次々とふしぎなできごとに見舞われていくのであった……(続く)。