ツンデレだった特養の飼い猫「クロ」が、入居者と添い寝をするようになったワケ…国が定める職員の配置基準と関係?

AI要約

特別養護老人ホーム「さくらの里山科」では、猫と共に生活する入居者によって暖かいエピソードが紹介されています。

保護猫のクロが元々ツンデレな性格だったが、年を取ると人懐こくなり、入居者と一緒に寝るようになったエピソードが紹介されています。

施設の特徴や介護職員の配置基準についても言及されており、入居者と猫が暮らす特別養護老人ホームの様子が伝えられています。

 神奈川県横須賀市にある特別養護老人ホーム「さくらの里山科」では、犬や猫と一緒に暮らすことができます。施設長の若山三千彦さんが、人とペットの心温まるエピソードを紹介します。

 ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」で飼われている保護猫出身のクロは、若い頃は典型的な“ツンデレ”猫でした。元々高齢者に飼われていたので、人になでられるのは嫌いではありません。ただし、それは自分がなでられたい時だけです。自分から人にすり寄っていく時はいいのですが、人の方から近づいていくと、さっと逃げていきます。そんな時、なでようとして手を伸ばそうものなら、シャーッと威嚇して猫パンチを繰り出します。

 その頃のクロのお気に入りの場所は、高さ180センチもある、4段重ねのケージの天井でした。最上階のケージの中ではなく、さらに高い天井の上にいつも陣取っていました。その高みから、監視カメラのように、じーっと人間たちの動きを見ていたのです。

 ちょっと気難しい猫でしたが、時折自分から甘えてくるのがあまりにかわいらしかったので、入居者には人気がありました。「あら~、クロちゃん、来てくれたの」と、皆さん大喜びしていました。

 そんなツンデレだったクロが、今では入居者と一緒に寝ています。クロは今年、推定15歳。最近は20歳以上長生きする猫も珍しくないですし、平均寿命も15.79歳(一般社団法人「ペットフード協会」、2023年調査)となっていますから、決して超高齢というわけではありません。実際クロも、いくつかの病気は抱えていますが、普通に過ごせています。しかし、年を取ったことで、人恋しくなったようです。

 クロが「さくらの里山科」にやってきたのは、ちょうど11年前の2013年6月でした。保護猫だったので正確なところはわかりませんでしたが、推定3~4歳ということでした。ツンデレで強気なお姫さまとして自由気ままに行動していたのですが、約3年前、12歳になった頃から少し様子が変わりました。

 最初に触れたように、廊下に置いてあった背の高い4段重ねのケージがお気に入りで、夜寝る時も、天井の上か、最上階に置かれたベッドと決まっていました。寝る間際まで、「勝手に近寄るんじゃないわよっ!」というようなオーラを放っていたのでしたが、12歳になった頃、夜中に人恋しくて鳴きだしたのです。

 「さくらの里山科」はユニット型の特別養護老人ホームです。ユニット(区画)のリビングは、日中は職員や入居者が必ずいて、無人になることはありません。しかし、深夜になると異なります。特別養護老人ホームは24時間体制で介護職員が交代勤務していますが、夜勤職員は2ユニットに1人という体制なのです。

 厚生労働省が定めている特別養護老人ホームの介護職員または看護職員の配置基準は、昼間は1ユニットごとに常時1人以上、夜間は2ユニットに1人以上となっています。これは、まともに介護ができる職員数ではありません。「さくらの里山科」では、日中の午前10時から午後6時までは、原則として1ユニットに職員が2人以上勤務するようにしています。そして、夜勤時間を短くして午後10時から翌朝午前7時までとしています。

 多くの特別養護老人ホームが、夜勤1人体制(2ユニットに1人体制です)になる時間を午後8時ごろから翌朝午前7時までぐらいにしていますので、「さくらの里山科」の夜勤時間は2時間ほど短くなっています。少しでも職員が2ユニットに1人しかいない時間を減らすためです。厚労省は、特別養護老人ホームに入る収入である介護報酬を、職員の配置基準に基づいて計算していますから、職員を多く配置すれば、それだけホームの運営は苦しくなる一方なのですが……。