風呂キャンセルを防ぐには 「嫌」ポイントと自分の価値観を見極めて

AI要約

風呂キャンセルの原因や対策について解説。

活性化エネルギーを使う順番を工夫して、風呂キャンセルを回避。

個々のライフスタイルに合わせた帰宅後のタイムスケジュールを提案。

風呂キャンセルを防ぐには 「嫌」ポイントと自分の価値観を見極めて

 本当は夜寝る前に入浴したいと思いながらも、結局入ることができないまま寝てしまう「風呂キャンセル」。前回に続き、その原因分析と対策をお伝えします。

 ADHDの主婦リョウさん(仮名、40代女性)も風呂キャンセルに悩むひとり。詳しく分析すると、風呂のプロセスの中でも、「ドライヤーで髪を乾かす」が最も嫌なポイントであることがわかりました。スタンド式ドライヤーを導入したところ、風呂へのハードルが下がったのでしたね。

 しかし、リョウさんの風呂キャンセルはこのぐらいでは解消しませんでした。

 リョウさんは帰宅した時点で、服用している薬の効果が切れるのか、もう「電池切れ」状態。風呂へのハードルを下げたところで、動けないのです。

■家に帰ると「電池切れ」に対処するには

 ここで思い出していただきたいのは以前(2023年5月12日)に公開した「帰宅後に電池切れで動けない 『やる気エンジン』を1回だけかけよう」というコラムです。

 そのコラムでは、心理学では、何かにやる気を出す時に必要なエネルギーを「活性化エネルギー」と呼んでいて、

(1) 物事をやり始める最初が一番エネルギーを要する。

(2) 活性化エネルギーを出す回数は少ない方がいい。

 という原則があることをご紹介しました。この原則に基づいて、リョウさんが帰宅後何をどの順番でこなしていけばいいのかを考えたのですね。

 リョウさんは、夕方のしんどさが入浴でちょっとマシになるタイプでした。

 そこで、原則に照らして、帰宅後すぐにお風呂に入るプランを採用しました。職場から自宅まで歩いて帰り、活性化エネルギーの高い状態から、帰宅後すぐ一息もつかずに、風呂→夕食作り→夕食へとひとつなぎにしてこなせば、活性化エネルギーは夕食作りの前に1回出すだけでよく、「やるべきことは全部終わってる! もうあとは寝るだけだ! 夕食の洗い物は最悪明日洗うのでもいいや」となって、寝てしまえるわけです。

 リョウさんはこれで、風呂キャンセルを解消できそうです。

 ただ、ここまでお読みになった方で違和感を覚える方もいらっしゃるでしょう。

 次のような懸念はありませんか?

(1) そんなに短時間に夕食作りを済ませるなんて嫌だ。私は料理が好きだ。

(2) リョウさんは帰宅して家事と風呂ぐらいで済むからいいけど、私は家で資格試験の勉強もあるんだ。先に風呂と夕食が終わっても、そこで終わりじゃないんだ。

(3) 帰宅してすぐに風呂に入るなんて、疲れ切ってその後の家事などできない。

(4) 帰宅してすぐに風呂に入ると、その後に生じた汚れを持って布団に入ることになるのが嫌だ。

 人の価値観は本当にそれぞれです。(1)の方は、きっと「料理」が好きで、その行動自体がストレス解消にもなるからこういうふうな発想なのでしょう。(2)の方は帰宅後勉強することが重要なのでしょうし、(3)の方は入浴にエネルギーを使い切ってしまう体質ですから帰宅後すぐ風呂作戦はやめた方がいいでしょう。(4)の方は寝具の清潔さが命で、寝る直前の風呂がベストなのでしょう。

 あくまで、「自分が何を重視しているか」によって、帰宅後のタイムスケジュールは組み替えるべきです。

■(1)「料理が趣味」派

 料理に時間をかける分、他の何を削るのかを検討します。このタイプの方は、今日の夕食の材料を今日スーパーに寄って買いたいという希望をお持ちの場合が多いので、次の手順はいかがでしょうか。

 <スーパーで買い物→帰宅→料理→夕食→短めの風呂→くつろぐ代わりにさっさと寝る>

■(2)「帰宅後勉強」派

 勉強時間を最大限にとる、かつ、眠気が最大の敵です。食事時間と量に注意です。

 仕事からの帰りにカフェに寄って、バナナなどで軽い夕食をすませながら(あまり食べると眠くなる)、勉強します。帰宅後すぐに風呂を済ませば、自宅にオンモードを持ち込まずに、活性化エネルギーの山が1回で済みます。

 <カフェでバナナ夕食とりながら勉強→帰宅→風呂→寝る>

■(3)「風呂で疲弊」派

 お風呂で疲れてしまう人は全般的に体力が少なめですから、夕方以降にすること自体を極力減らします。夕食準備のエネルギーもなさそうなら先に何か口に入れます。

 <帰宅→軽食(ブロッコリーでもゆで卵でもなんでも)→夕食準備→夕食→風呂→寝る>

■(4)「寝具は聖域」派

 寝具が清潔であることが大事ですが、そうなると帰宅後からいったん活性化エネルギーが落ちて、再び「よいこらしょ」と重い腰を上げる必要があるため、風呂キャンセルにならないよう、風呂に入らざるを得ない必然性を用意しておきます。

 <帰宅→夕食準備→夕食→くつろぐ→風呂タイマーでお湯はりしておくので仕方なく風呂に入る→寝る>

 <帰宅→夕食準備→夕食→くつろぐ→風呂に入りたい時間に大音量で脱衣所の目覚ましが鳴る→仕方なく目覚まし時計を止めに脱衣所に来たらあきらめて風呂に入る→寝る>

 いっそくつろがないのも手です。その代わり早く寝てください。

 <帰宅→夕食準備→夕食→アイロンがけ→洗濯物干し→風呂→寝る>

 その他の価値観もあるでしょう。筆者は、夕食よりも、テレビなどを見てくつろぐよりも、夜の外出よりも、「趣味」と「睡眠」重視派なので、帰宅後すぐに風呂に入ったら、夕食は家族のために作りますが自分は食べずに(眠くなるから)、あとは趣味(このコラムを書くのも趣味のひとつ)に全振りしてから、午後9時ごろには寝てしまいます。

 自分の人生。何を重視するかを決めたら、他は潔く削り落とすのもなかなか面白いですよ。