外科医がハマった離島の面白さ ~グローバルな視点で格差に挑む~

AI要約

宮古島市に赴任した外科医の浅野志麻医師が離島生活を楽しんで定住し、外科医療の地域格差をなくすために活動している。

浅野医師は子どもの頃からものづくりや機械いじりが好きで、大学では医学部に進学。外科医を目指し、沖縄で研修を受ける中で海外とのつながりも持つ。

日本と海外の医療技術や働き方の違いを経験し、日本の医療技術の精度や細やかさに感銘を受ける。

外科医がハマった離島の面白さ ~グローバルな視点で格差に挑む~

 宮古島市は沖縄本島から南西約300キロ、六つの諸島合わせて人口約5万5000人の離島。15年前、宮古島市唯一の総合病院に研修医として赴任した浅野志麻医師は離島特有の文化や風土、人とのつながりに心地よさを感じて定住を決意。外科医として地域の実情に即した医療を実践する傍ら、外科医療の地域格差をなくすべく、グローバルな視点で研究や活動に注力する。

 「人と生活を診る」医療の魅力や海外の地域格差対策、外科医が地方で働く意義について語ってもらった。

 子どもの頃からものづくりや機械いじりが好きでした。中学生になると海外に憧れ、大学は国際政治や経済学が学べる東京の大学に入学しました。英語が堪能で積極的な友人に囲まれ、鹿児島から上京したばかりの頃はカルチャーショックの連続でした。高校時代に薬剤師の父親から医学部を勧められていましたが、当時は自信がなく自分には無理だと諦めていました。都会の大学で学びもまれる中で、「やはり医学の道に進みたい」という気持ちが強くなり、在学中に猛勉強し、大学卒業後に都内の医学部に入学しました。

 自らの手で治療ができる外科を医学部時代から志望し、卒業後の研修先は父親の実家で子どもの頃からよく訪れていた沖縄を選びました。米国との関係が深い病院で働くことで海外とのつながりを持ちたいという期待もありました。ハードな研修医生活の中で、沖縄に訪れた学生時代の友人と結婚。在宅ワークの夫が家事を快く引き受けてくれたことで仕事に専念できました。

 研修中、ハワイ大学医学部での1カ月間の研修プログラムに参加しました。日本の医療技術は世界的に見ても決して引けを取らないと聞いてはいましたが、外に出たことで日本の医療技術の素晴らしさを改めて実感できました。例えば、日本では細かく膜に沿った解剖やリンパ節郭清を意識して手術を行います。一方、ハワイではそこまで細かく切除することなく手術し、化学療法でも治療するという手術に対する手法や考え方に大きな違いがありました。どちらの治療が正しいということはありませんが、日本の医療技術の精度の高さや細やかさが自分には合っていると思いました。

 米国人の効率的でメリハリのある働き方も印象的でした。とにかく朝が早く、終わる時間も早い。カフェテリアで買った朝食を食べながらカンファレンスが始まり、夜は定時になると当直医にさっと引き渡して退勤するというのが見事にルーティン化されていることには驚きました。