木星の「大赤斑」は1665年に発見された「永久斑」とは異なる可能性が高いと判明

AI要約

木星の大赤斑は古代から存在する巨大な嵐で、その正確な年齢には議論がある。

最新の研究によると、大赤斑の現在の年齢は少なくとも193歳であり、1665年の発見以来観測されている。

大赤斑の赤色は高気圧性の嵐による光化学的変化により生成され、その寿命は数百年以上に及ぶ可能性がある。

木星の「大赤斑」は1665年に発見された「永久斑」とは異なる可能性が高いと判明

木星の表面にある巨大な嵐「大赤斑(Great Red Spot)」は、その大きさと真っ赤な色、そして非常に長い寿命で知られています。特に寿命については、1665年にジョヴァンニ・カッシーニが発見した「永久斑(Permanent Spot)」が現在の大赤斑と同じものであり、それ以来ずっと存在しているという説があります。この説が正しければ大赤斑の年齢は少なくとも359歳となりますが、この推定には異論もありました。

バスク大学のAgustín Sánchez-Lavega氏などの研究チームは、17世紀から現在までの木星の観測記録の精査と、最新の観測データに基づく木星の大気のシミュレーションを実行しました。その結果、現在の大赤斑はカッシーニが発見した永久斑とは異なる可能性が高いことが分かりました。この場合、現在の大赤斑は1831年に初めて観測されたため、年齢は少なくとも193歳であることになります。

太陽系最大の惑星である木星には、渦状の雲で構成された大小さまざまな嵐があります。中でも目立つのは南半球にある「大赤斑」と呼ばれる巨大な嵐です。やや楕円形の大赤斑は直径約1万4000kmと地球よりも大きく、風速125mの暴風が常時吹き荒れています。この風速は、地球の大気現象では、非常に稀にしか発生しない極めて強い竜巻の瞬間最大風速に匹敵します。

大赤斑の名前の由来でもある赤色がなぜ生じるのかはよく分かっていませんが、高気圧性の嵐(※1)という大赤斑の性質をもとに、大気の上層部にある雲が下降気流によって吹き飛ばされたことで大気の下層部にある物質が剥き出しとなり、日光による光化学的変化によって赤い物質が生成されるからだと考えられています。

木星の表面で非常に目立つ大赤斑は、古い天文観測においても記録されていることから、寿命は数百年以上あると言われています。しかし、大赤斑の本当の年齢には議論もありました。最も有名なのは、1665年にジョヴァンニ・カッシーニが発見して以来300年以上存在しているという説です(※2)。この場合、大赤斑の年齢は2024年時点で少なくとも359歳であることになります。

カッシーニとその他の天文学者は、1665年から1713年にかけて木星の嵐を観測し続けており、その寿命の長さから当時は「永久斑」と呼ばれていました。永久斑の色は天文記録そのものでは言及されていないものの、1711年に画家のドナート・クレティが天文学者の助言を受けながら作成した作品群『天文観測』(※3)を見る限りでは、永久斑は赤い色をしていたことが示唆されます。このことが、17世紀の永久斑と現在の大赤斑とが同じであるとする根拠となっています。