じつは、ほとんどが1回限りの命…衛星時代の今も、はるか上空へ放たれる「気球」。伝えてくる現象「じつに、リアル」だった

AI要約

6月8日が「成層圏」が発見された日とされていたことから、成層圏など高層の大気と気象や天気予報との関わりについての解説をご紹介しています。

天気図といえば、天気予報の始まり以来、長い間「地上天気図」が用いられてきました。しかし、地上だけでなく、高層大気の観測を行うことは、大気の状態を知るために不可欠です。

気球で高層大気を直接観測するラジオゾンデは、気球の浮力によって大気高層へ上昇し、気圧、気温、湿度などを測定するセンサと無線送信器を備えた測定器です。

じつは、ほとんどが1回限りの命…衛星時代の今も、はるか上空へ放たれる「気球」。伝えてくる現象「じつに、リアル」だった

 6月8日が「成層圏」が発見された日とされていたことから、成層圏など高層の大気と気象や天気予報との関わりについての解説をご紹介しています。

 今回は、はるか高い大気の状況を観測する独特の技術や得られる情報についてご紹介します。気象や天気に関する入門書として好評の『図解・天気予報入門』、および『図解・気象学入門 改訂版』の著者、古川武彦さんと大木 勇人さんの解説でお届けします。

 ※本記事は、『図解・天気予報入門』、および『図解・気象学入門 改訂版』を再編集・再構成の上、お送りいたします。

 天気図といえば、天気予報の始まり以来、長い間「地上天気図」が用いられてきました。しかし、地上だけでなく、5000m や10000m といった高層大気の観測を行うことは、大気の状態を知るために不可欠です。太平洋戦争後の1950年代からはラジオゾンデによる上層の観測に基づく「高層天気図」が加わって、「地上・高層天気図」時代に入り、現在も続いています。

 また、高層気象観測は、気球による直接観測である「ラジオゾンデ」観測だけでなく、電波を使用した遠隔観測である「ウィンドプロファイラ」もあり、図「高層気象観測網」 のような観測網があります。このほかに航空機による観測も行われています。

 図「気象観測のスケール」は、それぞれの測器がどのくらいの高度の現象を観測できるか、また水平にはどのくらいのきめ細かさで観測できるかを示したものです。

 気球で高層大気を直接観測するラジオゾンデ(radiosonde) は、気球の浮力によって大気高層へ上昇し、気圧、気温、湿度などを測定するセンサと無線送信器を備えた測定器です。発泡スチロールの小箱の内部および外部に各種の観測センサと無線送信機を備えています(「ラジオゾンデの気球につるされる観測機器」)。

 水素ガスまたはヘリウムガスを充塡(じゅうてん)したゴム気球にラジオゾンデをつり下げ、「高層気象観測網」に示した全国16か所の気象官署から上空に放たれます。

 気球の運動速度はほぼ一定で、上昇しながら、水平方向には風と一緒に流され、約30 km上空まで上昇します。

 地上から飛揚したラジオゾンデは、30分後には高度約10km、90分後には高度約30km に到達し、上昇中に大気を直接測定して、その結果を刻々と電波で地上に送信します。地上では、受信したラジオゾンデの信号を解析することで、大気の状態を連続的に知ることができます。

 気球は高度が高くなるにつれて気圧低下によって膨張し、最後は破裂して、パラシュートで緩やかに地上へ降下します。冬季に日本海側の輪島などで飛揚されたラジオゾンデが、西風に流されて東京の近郊で回収される場合や、夏季は上空の風が弱いため陸域に落下する場合もあり、時折回収されますが、多くは回収されず1回限りの使用となります。

 一般的には、ラジオゾンデとは電波(radio) を利用して大気を探査する(sonde) 測定器の総称ですが、細かく見ていくと、いくつか種類があります。