体重が増えた30代女性 宿便対策の「やせる」お茶を飲み続けたのに排便困難になったワケ…内視鏡検査を受けると「大腸黒皮症」

AI要約

20代のころは適正範囲の体重だった30代の女性が宿便に関する情報をきっかけに、下剤成分を含むお茶を摂取し始める。

摂取量を増やすことで体重は一時的に減少するものの、大腸の機能に障害をきたし、便秘が悪化する。

結果的に依存症の状態となり、胃腸の健康を損なう結果となった事例。

 消化器内科医の松生恒夫さんが、豊富な診療経験を基に、胃や腸の整え方を紹介します。

 日本人の若い女性のやせ過ぎが問題になっています。やせる効果をうたう様々なサプリメント類が販売されているようです。クリニックで週1回便秘外来を開いていると、やせ願望が動機になって便通に問題を抱える若い女性も珍しくありません。情報誌で見た「肥満の原因、宿便はお茶でとれる」というお茶を飲み続けた結果、私の外来を受診することになった患者さんを紹介します。

 その30代の女性は、20代のころには身長165センチで60キロですから、適正範囲の体形でした。ところが30代になり体重が増え始めて、宿便について触れた記事が目に留まったそうです。「宿便を排せつすることができる」という生薬でできたお茶を早速購入して毎日飲み始めました。

 飲み始めると、排便がスムーズになり、おなかがすっきりした気がします。しかし、体重は減りません。そこで朝食を抜いて、お茶の濃度を規定の2倍にしました。すると、おなかがすっきりし、2キロ減量できたそうです。「もっとやせたい」と思った女性は、夕食のご飯を半分に。食べる量が減ると、当然、便の量も減るので便が出にくくなります。そこでお茶の濃度を濃くして1日2回飲むようにすると、今度はお茶を飲まないと排便できなくなってしまいました。

 そうなって便秘外来を受診されました。食事を減らしたため、体重は50キロと確かにやせたのですが、腹部の膨満感を覚えるようになっていました。大腸の状態を確かめるため、大腸内視鏡検査をすると、大腸に色素が沈着する大腸黒皮症(大腸メラノーシス)の状態。腸管神経そうに障害が生じて腸の動きが鈍くなってしまいます。

 この女性が飲んでいたお茶の正体ですが、大腸刺激性の下剤の成分にもなる生薬のセンナだったのです。センナ茶ですね。センナ、ダイオウ、アロエを成分にする下剤はアントラキノン系と言われ、よく使われているのですが、常用していると、効果が薄れ大腸黒皮症を引き起こします。「宿便を排せつさせる」お茶は、下剤と同様の作用がある成分だったわけです。私は、下剤がないと排便ができなくなる状態を「下剤依存症」と呼んでいますが、お茶でも同じことが起こるのです。