1/10の確率で採用される採用試験、20社受けたら採用の「期待値」は何社?

AI要約

算数の基礎から学び直すためには、期待値の概念を理解することが重要です。

期待値は宝くじの当選金額の平均値だけでなく、様々な場面で応用できる考え方です。

例えば、就職活動やビジネスでの意思決定など、期待値を活用することで効果的な行動ができることがある。

1/10の確率で採用される採用試験、20社受けたら採用の「期待値」は何社?

 食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。

 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。

 『大人のための算数力講義』連載第17回

 『「3人でじゃんけん。あいこになる確率は?」…多くの人が誤解している「確率」を理解できていますか』より続く

 期待値というと何を想像するだろうか。

 学校の教科書では宝くじから期待値を学ぶこともあって、おそらく次のような味気ない宝くじを想像するのではないだろうか。

 このくじを1本引いて得られる賞金の平均値は、

 (1000×1+100×2+10×3)/10=123(円)

 となり、これを「1本引いたときの賞金の期待値」という。

 上式左辺は

 1000×1/10+100×2/10+10×3/10

 とも書けるように、一般にくじを1本を引いたときの賞金の期待値は、

 1等の賞金×1等を当てる確率+2等の賞金×2等を当てる確率+……+末等の賞金×末等を当てる確率

 という式で表すことができる。

 ところで、学校教育では「期待値といえば宝くじ」というように、あまりにも応用の範囲が狭い。本書では応用の範囲を広くして、いきいきと期待値を学ぶことにしたい。

 いまから十数年前、大学生の就職が厳しい時代に、筆者は桜美林大学での補職として就職委員長を任せられていた。

 非言語系の算数・数学の適性検査の成績をアップさせることが緊要だと理解したこともあって、当時、後期の木曜日の夜間に「就活の算数」というボランティア授業を行って、学生諸君を励ましていた。確率や期待値の授業を展開した頃、余談として何回か次のような話をしたことを思い出す。

 「1社の採用試験に受かる確率が1/10であっても、そのような会社を20社受ければ、採用の期待値は2社になる。『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』という諺を思い出して頑張ってください」

 上の話は簡単な応用例であるが、次にビジネスへの応用として、スーパーマーケットでの加工食品の仕入れに関して述べよう。

 仮定として、 仕入れ個数は20個単位で、 売れたときの利益は1個につき400円、 売れなかったときの損失は1個につき900円とし、お客の購入希望合計数予測は次の通りとする。