熊本市の黒橋貝塚から縄文後期の人骨出土 膝を曲げた状態 「縄文人のルーツ探る貴重な資料」

AI要約

熊本市の黒橋貝塚で縄文時代後期の成人女性の埋葬人骨が発見された。貴重な資料として注目されている。

黒橋貝塚は西日本最大級の貝塚であり、埋葬人骨は史跡の隣接地で見つかった。

石皿や配石遺構など、墓地の証拠も見つかり、縄文時代の暮らしを知る重要な発見となった。

熊本市の黒橋貝塚から縄文後期の人骨出土 膝を曲げた状態 「縄文人のルーツ探る貴重な資料」

 熊本市は24日、南区城南町の黒橋貝塚で縄文時代後期(約4000~3500年前)の埋葬人骨が出土したと発表した。ほぼ全身の骨が残っており、25~40歳くらいの成人女性とみられる。市文化財課によると、縄文期の人骨は1991年までの黒橋貝塚と阿高貝塚の調査で70体以上見つかっているが、同課は「非常に良好な状態で残っており、当時の人々の形質や縄文人のルーツを探る上で重要な資料となる」としている。

 黒橋貝塚は縄文時代中期後半から後期(約4500~3500年前)の遺跡で、浜戸川対岸の阿高貝塚と共に西日本最大級の貝塚として一部が国史跡に指定されている。

 今回埋葬人骨が見つかったのは史跡に隣接する約8平方メートルの民有地。所有者から開発の打診があり、市が4月22日から5月2日に発掘調査を実施した。

 同課によると、人骨は深さ約3メートルの土層で見つかり、膝を曲げた屈葬の状態で埋葬されていた。頭の近くから見つかった石皿[いしざら](直径約30センチ)は墓標の可能性もあるという。石皿や磨石[すりいし]を意図的に配置した配石遺構も見つかった。

 調査区域で貝層は確認できなかったが、貝塚と同時期の縄文土器・石器のほか、イノシシやマダイの骨、ドングリなど食料の残りかすが大量に出土。水分の多い土層に守られ、多くの遺物が良好な状態で見つかったとみられる。

 同課は「調査区域も縄文人の『再生を祈る信仰の場』や『ごみ捨て場』だったことが分かり、一帯が500年以上かけて形成された4万平方メートルを超える巨大な貝塚であることがあらためて明らかになった」と話している。

 今後、共同研究で人骨のDNA分析を行う土井ケ浜遺跡・人類学ミュージアム(山口県下関市)の松下孝幸館長は「謎の多い縄文人の姿に近づける貴重な資料。保存状態が良いのでDNAを抽出できることを期待している」と話した。(澤本麻里子)