[山口県]全線不通の美祢線「単独での復旧困難」…JR西が地元に部会設置を提案

AI要約

JR美祢線は昨年の豪雨災害で全線不通となった。JR西日本の広岡研二支社長はJR単独での復旧が難しいとの見解を示し、鉄道復旧の前提条件なしに地域に適した公共交通を検討する提案を行った。

JR側の総会での発言は初めてで、鉄道復旧後の利用促進策により輸送密度が増加する可能性が示されたが、広岡支社長は鉄道の持続可能性を懸念し、新たな部会設置を提案した。

JR側の提案に対し、協議会は検討を要求し、7月中の臨時総会開催で合意。美祢線は現在代行バスを運行中。

[山口県]全線不通の美祢線「単独での復旧困難」…JR西が地元に部会設置を提案

 昨年6月末からの豪雨災害のため全線不通になっているJR美祢線について、JR西日本中国統括本部の広岡研二広島支社長は29日、「当社単独での復旧は非常に難しい。仮に復旧しても当社単独での持続的な運行は困難」との見解を示した。沿線自治体や県などでつくるJR美祢線利用促進協議会に対して、鉄道の復旧といった前提条件なしに、地域にふさわしい公共交通を検討する部会を新たに設置することを提案した。

 同日に山陽小野田市で開催された同協議会総会での発言で、JR側が美祢線の復旧に関する見解を示したのは初めて。総会では、昨年10月に設置したワーキンググループによる鉄道復旧後の利用促進策の検討結果が報告され、多様な利用促進策を全て実施した場合、1キロ当たりの1日平均乗客数を示す輸送密度が2019年の478人と比べて少なくとも685人、最大で1292人にまで増加するとの試算が示された。

 この検討結果に対し、広岡支社長は大量輸送の鉄道の特性を生かせる目安が2千人で、試算によっては国が設置する再構築協議会の対象基準である千人も下回ると指摘。JR単独での復旧や持続的な運行は困難として、美祢線の持続可能性や利便性向上について議論する部会の設置を提案。より便利で持続可能な交通体系の検討や調査・実証実験を行い、地域にふさわしい公共交通の早期実現を目指すとした。

 県側が「鉄道での復旧に地域の負担が求められる場合、まずは復旧費用の規模を示していただく必要がある」と求めたのに対し、広岡支社長は「鉄道の復旧には相当な費用を要すると考えるが、今の段階で正確に算出するのは非常に難しい。新たな部会の中で前提条件を整理して提示させていただきたい」とした。

 JR側が早期の部会設置を求めたのに対し、同協議会は提案をいったん持ち帰って各団体で対応を検討し、7月中をめどに臨時総会を開催することで合意した。

 総会後、広岡支社長は取材に「被災前から鉄道が地域にふさわしい輸送手段だったかというと必ずしもそうではない状況が続いていた。地域の方々が将来にわたって便利に使うことができる公共交通は何なのか、前提を置かずに議論させていただきたい」とした。

 協議会会長の篠田洋司美祢市長は、JR側の提案について「これまで当然、われわれは鉄路としての復旧をお願いしてきた。提案を重く受け止め、持ち帰って検討したい」と述べた。

 美祢線は大雨で鉄橋が崩落するなどして全線で不通が続いており、代行バスを運行している。