ツキノワグマ目撃・足跡情報、山口県で過去最多444件…エサ不足で柿など求めて人里近くに?

AI要約

2023年度に山口県内でツキノワグマが目撃された件数が過去最多の444件に上ったことが明らかになった。

県内の主なツキノワグマの生息地は西中国山地で、目撃情報は岩国市を中心に相次いでいる。

ツキノワグマの増加による人的被害を防ぐため、狩猟が禁止されているが、捕獲を行っている。

 2023年度に山口県内でツキノワグマが目撃されたり、足跡が見つかったりした件数が444件に上り、統計を開始した1997年以降で最多になったことが、県のまとめでわかった。今年度も23年度と同じペースで目撃情報が寄せられており、県は警戒を呼びかけている。(小野悠紀)

 県内では島根、広島両県と山口県東部にまたがる西中国山地がツキノワグマの主な生息地とされている。

 県によると、23年度は全19市町のうち周防大島町を除く18市町で目撃情報があった。市町別では岩国市が最多の192件で、周南市74件、山口市54件、萩市36件などと続いた。今年度に入ってからも目撃情報が相次ぎ、今月20日現在で59件で23年度の同時期の53件を上回っている。

 国はツキノワグマを狩猟対象としているが、西中国山地は他の生息地から離れ、環境省が「絶滅の恐れのある地域個体群」に登録しており、狩猟が禁止されている。

 ただ、農作物や人的な被害を防ぐため、3県は1997年度からそれぞれ保護管理計画を策定し、年間で計数十頭を捕獲できるようにした。さらに2022年度からは、生息数の増加が調査で判明したことを受け、捕獲上限を計135頭に引き上げた。23年度の県内の捕獲数は54頭で、最多だった10年度の59頭に次いで多かった。

 目撃情報が増えている背景には、木の実などのエサ不足や、空き家の敷地内に植えられている柿などの果実を求め、人里近くに下りている可能性があるという。ツキノワグマは本来、臆病な性格で人間を怖がって逃げるとされる。しかし、冬眠期間中に出産した雌は春に子グマを連れて行動するため、攻撃的になっている恐れがある。

 県自然保護課の山田隆信主幹は「クマの目撃情報があった場所には近づかない、山に入る際は遭遇しないように鈴やラジオなどの音で自分の存在を知らせるなどの対策をしてほしい」と注意を呼びかけている。