熱海土石流起点で新たな崩落、確認4日後に知事へ報告 下流域の住民に周知せず

AI要約

熱海市伊豆山で2021年に盛り土が崩落し住民28人が死亡した土石流の起点部2カ所で9月上旬に台風10号の影響とみられる新たな崩落が発生した。知事への報告遅れと住民への周知不足が問題視されている。

崩落箇所は被害状況報告に含まれず、知事に報告された時点では規模が小さく軽微と見なされていた。知事は判断を保留し、自身の現場確認が不十分なことを認めた。

21年の土石流前にも盛り土の崩落が繰り返される中、現場確認した職員がリスク調査を怠り、知事ら幹部に報告せず住民への適切な情報提供が欠如していた。

 熱海市伊豆山で2021年に盛り土が崩落し住民28人が死亡した土石流の起点部2カ所で9月上旬に台風10号の影響とみられる新たな崩落が発生したことに関し、鈴木康友知事は10日の定例記者会見で、知事に報告されたのが職員による確認から4日後で、下流域の住民に周知していなかったことを明らかにした。庁内の報告や住民への周知の在り方が妥当だったのかについて、今後、詳細な事実確認をすると説明した。

 崩落箇所は県危機管理部が3日に報道発表した台風10号の被害状況に含まれず、知事に報告されたのは静岡新聞社報道後の6日だったという。鈴木知事は「軽微な被害を含めてたくさんの被害が出ているので、ある程度まとまった形で(危機管理部から)報告を受けた。(土石流起点の崩落は)規模が小さくて軽微という判断だったのではないか」と釈明し、住民への周知の必要性について「現場の状況を私自身が確認していない」として判断を保留した。

 県熱海土木事務所の職員は起点部の崩落2カ所のうち、落ち残り盛り土の崩落を2日に確認。本庁に現場の写真を送ったが、本庁の職員は写真を確認しただけで報告は不要と判断し、知事や副知事に報告しなかった。もう1カ所の右岸側斜面の崩落は5日に確認したが報告しなかった。

 21年の土石流を巡っては発災前から盛り土の小規模崩落が繰り返されていたのに、現場確認した職員が土石流発生のリスクを詳しく調査せず、知事や副知事ら幹部にも報告していなかった。盛り土が上流域にあること自体も下流域の住民に知らせず、避難の遅れが被害を拡大させたと批判されている。