鹿児島県 黒糖一貫製造で「事業計画」認定 6次産業化で経営安定、雇用促進へ 岩下さん「機運波及、地域の底上げに」 ファームテック喜界

AI要約

喜界町坂嶺のファームテック喜界は、サトウキビの生産だけでなく加工や販売まで一貫して行う6次産業を核に、黒糖商品の高付加価値化に取り組んでいる。生産量の拡大を図るとともに、生産者の経営安定化や雇用の促進につなげる狙いがあり、今年6月には国に認定された。

代表取締役の岩下雅大さんは異色の経歴を持ちながら、帰郷後に黒糖工場を整備し、高度な衛生・品質管理を行い、地域の6次産業化を推進している。

現在、同社は純黒糖をはじめとする数種類の商品を製造し、HACCPの考えを取り入れた黒糖工場として着実に業績を伸ばしている。

鹿児島県 黒糖一貫製造で「事業計画」認定 6次産業化で経営安定、雇用促進へ 岩下さん「機運波及、地域の底上げに」 ファームテック喜界

 喜界町坂嶺のファームテック喜界は、サトウキビの生産だけでなく加工や販売まで一貫して行う6次産業を核に、黒糖商品の高付加価値化に取り組んでいる。生産量の拡大を図るとともに、生産者の経営安定化や雇用の促進につなげる狙いがあり、今年6月には6次産業化・地産地消法に基づく「総合化事業計画」として国に認定された。代表取締役の岩下雅大さん(40)は「取り組みの機運が(多業種にも)波及することで、地域の6次産業化の底上げになれば」と期待する。

 同集落出身の岩下さんは、格闘技K1の元ファイターという異色の経歴の持ち主で、2017年に帰郷。サトウキビ生産に携わりながら、21年に黒糖工場を一念発起し整備。加工、出荷までを一貫して手掛けるようになった。

 きっかけは帰郷後。島の生産者の高齢化が進み、離農が相次ぐ中、度重なる台風被害や塩害を目の当たりにし、「経営に波があっては、後継者も育たない」と危機感を覚えた。そこからは鹿児島本土に通い、農業塾で6次産業化を学び始めた。課題は、いかに効率よく生産性を高められるか。活路は、工場のオートメーション化だった。

 整備にあたってはプランナーに相談し、従来の土釜による製造法を見直し、圧搾、煮詰めなどの工程を機械化した。近年の食の安全に対する関心の高まりから、衛生・品質管理体制にもこだわった。当初は、基準となる黒糖の色や硬さ、石灰量などのデータを得るまでに1年以上の試行錯誤が続いた。だが、食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」の考えを取り入れ、根気強くデータを記録・分析することで、品種や収穫時期、気温、湿度によって変化するとされるデリケートな黒糖の味覚や風味も製造時にコントロールできるようになってきた。岩下さんは「失敗が生きている。繰り返し挑むことで喜界島の黒糖にしかない特長や魅力もみえてきた」と振り返る。

 現在、同社は純黒糖を始め、アンダーギーや地場産の白ゴマを使った黒糖菓子など、数種類の商品を一貫製造し扱う。最近は、妻の奈美さん(40)が力を入れるお洒落なパッケージやパンフレットも好評で、若者が手に取る機会も増えたという。

 今後は、農林水産省が認める「HACCPの考えを取り入れた黒糖工場」として、栽培面積の拡大、経営の安定化を進める。6次産業化を通して商品の開発力も高めながら、事業や従事者の所得向上、雇用の安定にも結び付けていく予定だ。岩下さんは「格闘技ができる頑丈な体に育ったのは、喜界島のミネラル豊富な黒糖があったお陰でもある。会社は設立時から〝喜界島から世界へ〟のスローガンを掲げ取り組んできた。6次産業化を通して、地域でもやりたいという声が上がるよう島の基幹産業で引っ張っていければ」と意気込む。