中心街に買い物弱者も・弘前中三閉店1週間

AI要約

青森県弘前市の老舗百貨店「中三」が閉店してから5日が経過し、中三の食品売り場の消失により、高齢者らが買い物に困難を抱えている状況が浮き彫りになっている。

特に、距離が倍近く離れた他の店舗に買い物に行かなければならない高齢者や身体的に不便を感じる人々が増えており、地域の買い物支援の必要性が高まっている。

弘前市の中心市街地における買い物の利便性や高齢者の生活に影響を及ぼす課題について、専門家らは自宅への宅配サービスや移動販売などの支援策が必要であると指摘している。

中心街に買い物弱者も・弘前中三閉店1週間

 青森県弘前市の老舗百貨店「中三」の閉店から5日で1週間がたった。中心商店街の土手町周辺に住みながらも身近な総合食品店を失い「買い物弱者」となった高齢者も少なくない。識者は買い物支援の必要性を指摘する。

 「納豆、豆腐を買うのが大変になった。すんごく不便」。中三から約300メートルの距離に住む同市百石町の女性(82)は両手に持ったストックで体を支えながら、開口一番語った。

 日配品から生鮮食品まで一通りの食料品がそろう中三の食品売り場がなくなり、倍近く離れた場所にある中土手魚菜センターとハッピー・ドラッグ弘前土手町店まで買い物に出かける。腰が悪く支えがないと歩けず、車も運転しないため、この距離を歩くのは重労働だ。「食べないと生きられないからね」。そう言うとストックをつき、市場へ向け歩いて行った。

 土手町周辺は行政機関やホテル、マンションなどが立ち並ぶ同市の中心市街地で、約3千人が住んでいる。

 農林水産省は百貨店やスーパー、生鮮食品の小売店などから500メートル以上離れ、かつ車を利用できない65歳以上の高齢者を「買い物困難者」と定義している。下土手町周辺エリアから近隣のスーパーまではいずれも500メートル以上離れており、街の中心部に空白地帯が生じている。中心市街地に複数のマンション建設が進む中、市が取り組む街なか居住推進に水を差しかねない。

 街づくりに詳しい弘前大学大学院地域社会研究科の土井良浩准教授(51)は土手町周辺にはコンビニエンスストアやドラッグストアが立地していることから危機的状況ではないとしながらも、将来的に買い物弱者が増える可能性を指摘。「地域外の人にも魅力的な店でなければ中心街の衰退に歯止めはかからない。まずは買い物の支援が必要な人を町ごとに把握し、宅配サービスや移動販売を取り入れていくことが先決」と話した。