8/26火山防災の日…立山“弥陀ヶ原火山”の調査に同行し対策の現状を取材「シェルター機能充実を」

AI要約

立山・地獄谷の活火山である弥陀ヶ原火山の現状やモニタリング調査について取材された記事。

地獄谷周辺での高濃度の有毒ガス噴出や遊歩道への立ち入り禁止など、火山活動の危険性や対策について紹介。

御嶽山の大規模な火山噴火を踏まえた対策についてや、立山・室堂平周辺での火山防災システムの必要性が議論されている。

8/26火山防災の日…立山“弥陀ヶ原火山”の調査に同行し対策の現状を取材「シェルター機能充実を」

8月26日は、国が今年から制定した「火山防災の日」です。

全国の活火山の数は111、富山県内には、立山・地獄谷の活発な噴気活動で知られる弥陀ヶ原火山があります。

現地で続けられているモニタリング調査に同行し、対策の現状を取材しました。

標高2450メートルに位置する立山高原バスの終着地点、室堂ターミナル。

春から秋にかけ、立山登山や室堂平散策の拠点として大勢の観光客で賑わいます。

実は、この周辺、過去1万年の間に7回の噴火が起きていることが分かっています。

気象庁は「概ね過去1万年以内に噴火」および「現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義。

全国111の活火山を選定し、立山室堂平の周辺は弥陀ヶ原火山と呼んでいます。

その弥陀ヶ原火山、およそ7800年前に起きた大規模な噴火では半径2キロ以上にわたって火山灰が降り積もったとされています。

火山活動について研究する富山大学の渡邊了教授です。

現在も活発な噴気活動のある地獄谷周辺で、モニタリング調査を続けています。

Q.ミクリガ池も過去の火山の痕跡?

*富山大学地球システム科学科 渡邊了教授

「水蒸気噴火でできた火口湖。弥陀ヶ原の中で一番大きな火口」

Q.どこで噴火の可能性がある?

*富山大学地球システム科学科 渡邊了教授

「このあたり一帯としか言いようがない。(噴火の)直前になれば前兆がでるが、今は全くわからない」

室堂ターミナルから歩いて15分、地獄谷につながる遊歩道に到着しました。

ガスマスクを装着して調査開始です。

地獄谷では、2011年に噴気活動が活発となり、噴出する有毒ガス、亜硫酸ガスの濃度が高くなっています。

翌年(2012年)からは、周辺の遊歩道への立ち入りが禁止されました。

今回の調査で渡邊教授が撮影した映像です。

ガスが勢いよく噴出しています。

*富山大学地球システム科学科 渡邊了教授

「地下のマグマから常に熱水が放出され、それが水蒸気になって出てきている状態。ずっと下からは熱が来ている」

地獄谷の風下にある登山道にはガスが流れ込み、鼻や口を抑えたり、咳込んだりする登山者の姿が見られました。

今回の調査で新たに分かったことは…。

*富山大学地球システム科学科 渡邊了教授

「色んな場所が活発になったり、おとなしくなったりするのを繰り返している。基本的にはあまり変わらない。これがここ1万年の地獄谷の平穏な姿だと思う。火山ガスが表面で出なくなった場合、閉塞した状況で、中の圧力が高くなる。逆にそちらの方が危ないシグナルになる」

*リポート

「絶え間なく、勢いよく噴煙が噴き出しています」

長野県と岐阜県にまたがる御嶽山、2014年に大規模な噴火がありました。

死者、行方不明者は63人に上り、死者の多くが噴石が当たったことによる「損傷死」とされています。

この戦後最悪の火山災害を機に、全国で対策が強化されました。

こちらが、その一例。

熊本県・阿蘇中岳に設置されたコンクリート製の避難用シェルターです。

1基あたり60人収容でき、火口近くに11基設置されています。

1基あたりの値段はおよそ2500万円です。

立山・室堂平周辺では、国、県、それに立山町の補助金を活用し、山小屋の屋根床を補強して登山者が噴火に遭遇した場合の避難先とする対策が取られています。

渡邊教授もそうしたシェルター機能を立山・室堂平の周辺でさらに拡充する必要があると訴えます。

*富山大学地球システム科学科 渡邊了教授

「本当にいつ起きるかわからないので、シェルターは必要。景観を壊さないようなシェルターを作る必要があって、観光客からもお金をとることも意識して、システムを作るべき」

Q.景観と一体になるシェルターとは?

*富山大学地球システム科学科 渡邊了教授

「遊歩道のどちらかに溝を掘って逃げ込めるようにすればいい。野球のダッグアウトというか、一段低くなったところに入り込めるようにすればいい」

シェルターの整備には山岳観光の魅力を損なわない景観への配慮に加えて、財源をどうするかの課題も横たわっています。

県や環境省などでつくる協議会は、立山連峰を含む北アルプスで登山客から任意で1口500円の入山協力金を徴収する制度を導入することを決めていますが、その目的は登山道の維持でシェルター整備への活用は想定されていません。

今年、新たに制定された「火山防災の日」。

弥陀ヶ原火山のモニタリング調査を続ける渡邊教授は、立山・室堂平周辺での対策強化に加え、登山者に対しても、まずは突然の噴火に見舞われるおそれがあることをしっかり認識することが重要だと指摘しています。

火山防災の日の制定に際し、国は、火山活動の観測や研究をより強化するとしていますが、私たちも立山を訪れる際はその心構えと備えが必要です。