滑川の自然文化をアートに 国登録有形文化財・田中小旧本館 滞在の金沢美大生ら、24日から展示

AI要約

金沢美大の大学院生ら若手芸術家3人が滑川市で制作した作品が展示される。

作品は滑川の自然や伝統文化からインスピレーションを得たもので、地域との交流を図っている。

展示は滑川の魅力を広め、地域活性に貢献する取り組みとして期待されている。

滑川の自然文化をアートに 国登録有形文化財・田中小旧本館 滞在の金沢美大生ら、24日から展示

 金沢美大の大学院生ら若手芸術家3人が滑川市に滞在し、現地の自然や伝統文化に触れて創作した作品が24日、加島町の国登録有形文化財・田中小旧本館で展示される。滑川の海や山、街並みから着想を得た作品を通じ、住民や作家同士の交流につなげる。市では若者たちが滑川の魅力を発信し、関係人口の増加に結びつく取り組みとして期待している。

 作品を展示するのは、金沢美大大学院の石井佑宇馬さん(23)、彫刻家の中澤瑞季さん(29)、東京藝大大学院の上條信志さん(26)の3人で、いずれも20代の将来有望な芸術家となる。

 若手作家の育成と文化を通した地域活性を図るアトム(東京)の「A―TOM ART AWARD」受賞の副賞として、今月1日から3週間程度、滑川で過ごしながら作品制作を進めてきた。作家が地域で創作活動に取り組む「滑川アーティスト・イン・レジデンス」の一環となる。

 会場の田中小旧本館は、アニメ映画「おおかみこどもの雨と雪」の舞台モデルとなった木造校舎で、ノスタルジックな雰囲気を生かして階段前や教室に作品を展示する。

 石井さんは縦4メートル、横1メートルの絹布を青く染めた作品「満ちて在る海」を制作。雄大な海を肌で実感する中で、水を大量に使う染色作業と海が重なった。水の力を生かした表現に挑戦し、「滑川で過ごした時間が詰まった展示になった」と笑顔を見せた。

 中澤さんは人間の形を組み合わせた彫刻「水平の向こう側」を仕上げた。滑川の町を自転車で巡る中で、海や山と町のコントラストが印象に残り、「自然と人の営みについて考える時間が増えた」と話した。

 上條さんは、木枠や和紙を使った空間芸術「凪(なぎ)の間」を手掛けた。滑川の海と奥に見える能登半島の映像を組み込み、「物語を紡ぐ作品ができた」と手応えをみせた。

  ●市長「滑川の良さ発信を」

 3人は滞在中、地域住民と食事をともにするなど交流を深めてきた。水野達夫滑川市長は「文化財である田中小旧本館の活用法の一例となる。作家の皆さんには、滞在中に感じた滑川の良さを発信してほしい」と期待を込めた。展示は9月1日まで。

 ★田中小旧本館 1936(昭和11)年に建てられた木造2階建て校舎。下見板張りの外壁と瓦屋根の外観に昭和初期の学校建築の典型的な姿を残し、天井や手すりにルネサンスやアールデコの意匠が凝らされている。47(昭和22)年に昭和天皇の行幸があり、2014(平成26)年にはアニメ映画「おおかみこどもの雨と雪」の舞台となった。16(平成28)年に国登録有形文化財となった。