根室市長「時計の針逆戻りに落胆」 富山県の北方領土中学生視察団、ビザなし交流中断など現状学ぶ

AI要約

富山県内の中学生18人が北海道の根室市を訪れ、北方領土返還運動の原点を学ぶ現地視察事業が始まった。

根室市と黒部市が姉妹都市提携を結んでおり、返還要求運動を通じた交流が行われている。

根室市役所では元島民の望郷の思いや領土返還への決意が語られ、若い世代の力が必要であると訴えられた。

根室市長「時計の針逆戻りに落胆」 富山県の北方領土中学生視察団、ビザなし交流中断など現状学ぶ

 北方領土について学ぶ青少年現地視察事業が19日始まり、富山県内の中学生18人が領土返還運動の原点の地とされる北海道根室市を訪れた。22日まで北海道に滞在し、関連施設を訪問したり元島民の体験談を聞いたりして、領土問題に理解を深める。

 事業は北方領土返還要求運動県民会議が主催し、黒部市、入善町、上市町、高岡市、射水市の中学2~3年生が参加。団長で同会議副会長の大野久芳前黒部市長ら5人が引率している。

 富山空港で行われた出発式では、入善西中2年の山口唯さんが「北方領土返還に向け、自分たちにできることを見つけたい」と意気込みを語った。

 根室市は富山県内で最も引き揚げ者が多い黒部市と姉妹都市提携を結び、返還要求運動を通して交流を深めている。

 根室市役所では石垣雅敏市長が講話し、ウクライナに侵攻したロシアとの関係悪化で北方墓参やビザなし交流が中断されている状況を説明した。「時計の針が30年以上戻っているような状況に、元島民ら関係者は落胆している」と語り、交渉の再開や領土返還の実現に向けて「皆さんのような若い力が必要」と訴えた。

 黒部市清明中3年の前田悠斗さんは「元島民の望郷の思いや領土返還を待ち続ける気持ちをしっかり受け止めたい」とお礼の言葉を述べた。

 初日の日程を終え、高岡市志貴野中3年の小久保篤希さんは「根室市と北方四島の結びつきの強さを感じた。視察を通して北方領土問題への視野を広げたい」と話した。

◆北方領土◆ 択捉(えとろふ)島、国後(くなしり)島、色丹(しこたん)島、歯舞(はぼまい)群島の総称。北方四島とも呼ぶ。19世紀初頭までに江戸幕府が支配体制を確立し、多くの日本人が住んでコンブ漁などを営んだ。終戦後の1945年8月18日、旧ソ連軍が択捉島北東の千島列島に侵攻し、9月5日までに北方四島を占領。約1万7千人いた日本人は強制退去させられた。富山県は北方領土からの引き揚げ者が1425人と北海道に次いで全国で2番目に多く、関わりが深い。