富士の吉原商店街、丸ごとホテルに 空き物件を客室に活用へ 宿場町“復活”へ交流創出

AI要約

富士市の吉原商店街で長らく放置されてきた空き物件活用策として、地元の富士山まちづくり会社が「アーケードホテル」事業を始める。

新規開業するホテルは、築60年前後の鉄骨4階建てビルを改修した。商店街内の回遊を促すレセプションラウンジと共に、商店街の活性化を図る。

各所の物件を客室に転用する手法は全国で見られる「分散型ホテル」の一形態であり、吉原商店街の活性化に期待が寄せられている。

富士の吉原商店街、丸ごとホテルに 空き物件を客室に活用へ 宿場町“復活”へ交流創出

 富士市の吉原商店街で長らく放置されてきた空き物件活用策として、地元の富士山まちづくり会社が「アーケードホテル」事業を始める。全長約700メートルの商店街を一つのホテルに見立て、空き物件を客室として順次稼働させる。長期構想の第一歩として8月1日、“街のエントランス”の役割を担うホテルが開業する。仕掛け人たちは「宿場町回帰」を掲げ、人と商業の集積地の復活を目指す。

 新規開業するホテルは、築60年前後の鉄骨4階建てビルを改修した。1階のレセプションラウンジで、スタッフが宿泊者に合いそうな雰囲気の店を紹介し、商店街内の回遊を促すのが特徴。客室は2~4階に4人用1室と2人用4室の計5室。1泊2人素泊まりで3万円前後に設定する。

 東海道吉原宿から発展してきた同商店街は、60年ほど前に共同ビルが立ち並んだ。衰退するにつれ、現在の空き物件は商店街全体で約1200件になった。特に2階以上は7割近くが稼働していない。同社の調査によると、上階は住居使用が前提の物件が多く、商業に不向きな実態もある。

 同社は用途変更が不要な範囲での活用策として、上階の民泊運営に乗り出す。1室1オーナー制として、所有者と合意に至った空き物件から順次出資を募り、改修して同社が管理する仕組み。将来的には70床の開拓を目標とする。

 各所の物件を客室に転用する手法は「分散型ホテル」とも呼ばれ、全国の商業地や文化的建築物群で誕生している。県内でも静岡市の中心街で「ビル泊」が運営されている。吉原商店街で同社取締役の鈴木大介さん(36)は地元住民と宿泊者の交流創出で他地域との差別化を目指し、「吉原は活発な30、40代が多い。交流を通して二度、三度来訪したくなる関係が築けるはず」と話す。

 同社による2015年のビルリノベーション以降、同社が関わった新規出店は延べ138店を数え、街は停滞から脱却して新陳代謝が起こっている。事業に携わる建築家の勝亦優祐さん(36)は「既存店が活気づき、空き物件も埋まっていく良い循環を生み出したい」と意気込む。